第368話 帽子の記憶
その帽子に出会ったのは、なんとなく入った店での事だった。とても綺麗に見えたその帽子に一目惚れして、私は帽子を買ったのだった。帰ってきた私は、部屋で帽子を被ってみた。さすが私だ。鏡に映る私は、帽子がよく似合う良い女に見えた。
次の瞬間、目の前が真っ白になった――。
帽子を被った長い黒髪の綺麗な女性が、向日葵畑で寝転んでいる姿が見えた。
そして私は、気が付いたら元の自分の部屋にいた。
「えっ……?何?今の?」
それから私は、その帽子を被る度に長い黒髪の綺麗な女性の姿が見えるようになった。友達と海で遊ぶ女性。手を繋ぎ、男性と楽しそうに会話しながら歩く女性。いつもこの帽子と一緒だった。
「そっか。あなたの前の持ち主の記憶を私に見せてくれているんだね」
私は、この帽子の前の持ち主である女性よりも楽しい思い出を一緒に作ろうねって。
この帽子からそう言われているような気がした。
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