第357話 死神の娘

今日も私は、現世で亡くなった魂を死後の世界へ導く仕事をしている。お父さんってば顔が怖いし鎌を持ってるから、亡くなった魂達から不評なんだ。だから最近は、私も魂を導く仕事をしている。


「こんにちは。私は死神です」

「こんにちは。おやおや……随分可愛らしい死神さんだねぇ。ホッホッホ」


穏やかなご老人だ。この魂は、現世では老衰で亡くなっている。余生を心穏やかに過ごしてきたのだ。もう思い残すことはないのだろう。泣きわめいたり取り乱したりしないから、扱いやすそうだ。

やれやれ……。

今日の仕事は、久しぶりに楽できそうだ。


「私は、死後の世界へ案内する仕事をしています」

「おお、それはそれは……。小さいのに偉いねぇ。私の孫くらいの歳の子だねぇ」


そう言って老婆は、私の頭を撫でた。私は、お父さんみたいな立派な死神ではなく、まだまだ未熟な死神だけど、死神を小さな子供扱いして頭を撫でられるのは困る。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る