第344話 二人の戦い

「お前に俺を捕まえられるか?」


目にもとまらぬ素早い動きで、私の前を何度も通り過ぎて挑発してきた。


「望むところよ!!」


私も臨戦態勢になった。ヤツは、左右に揺さぶりをかけてきたと思ったら上下にも揺さぶりをかけてきた。なるほど。左右だけの単純な動きではないという事ね。


ならば……

私は右手に持った叩き棒だけでなく、左手にも武器を携える。それはスプレー缶。


「二刀流よ。右手にハエ叩き棒、左手に殺虫剤よ。殺虫剤は広範囲。これであなたも終わりよ!!」


「ま、待ってくれ。参った。参ったよ。降参だ。殺虫剤はやめてくれ。悪かったよ。俺が調子に乗りすぎた。だから頼む。手打ちにしてくれ」

「しょうがないわね。ならさっさと出て行きなさい」


私は部屋の窓を開けた。


「ありがとよ。人間にも良い人はいるもんだな」

「あんた、もう人の家に入るんじゃないよ」


私の能力。それは虫と話せる事だ。

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