第302話 エトセ虎

動物園にいたのは、虎だった。しかしこの状況、他では、絶対にあり得ない。見る事ができない。なぜならば虎の他に、シカやイノシシにニワトリ等が同じ檻の中にいたからだ。案内板には「エトセ虎」と書いてあった。虎と他の動物達を一緒の檻に入れているから、虎とエトセトラを合わせた造語、エトセ虎としたのだ。エトセ虎の虎は、普通の虎と同じだ。もちろん肉食であり、襲われたらひとたまりもない。しかしエトセ虎の虎は、飼育員達によって調教された虎である。犬のように待てが出来るのである。

目の前に美味しそうな活きの良い野生の肉があるのに見向きもしない。エトセ虎にとって、シカやイノシシは、この動物園で一緒に育った仲間なのである。目の前に獲物があっても襲わない虎。この奇妙な光景を見ようと大勢の人が動物園を訪れた。虎とシカとイノシシが一緒に仲良く並んでいるエトセ虎グッズも売店で売ってる。なかなか売れ行きは良いらしい。

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