第127話 焼きおにぎり

ずっと不思議に思っていたことがあった。おばあちゃんが仏壇にお供えする物は、必ず焼きおにぎりだった。


「ねぇ、おばあちゃん。どうして仏壇に焼きおにぎりをお供えしてるの?」


小さい頃、私は疑問に思っておばあちゃんに聞いた。


「おじいちゃんが好きだったからだよ」


そんな答えが返ってきて、そうなんだと納得した。それから10年経ち、おばあちゃんは認知症になった。ご飯を食べたばかりなのに、ご飯はまだ?って聞いてきたり、お母さんの事をどちら様かしら?と聞いたりするようになった。でも仏壇に焼きおにぎりをお供えする事だけは、おばあちゃんは亡くなるまで忘れる事はなかった。おばあちゃんの葬式の時、その話題が出た。

私はここで初めて、焼きおにぎりをお供えしていた本当の理由を知った。それはおじいちゃんが病気で死ぬ間際、焼きおにぎりが食べたいと言ったからだった。今、私は毎日、仏壇に焼きおにぎりをお供えしている。

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