第100話 観覧車
津村遊園地が閉館になる。俺にとって津村遊園地は、子供の頃の思い出の遊園地だった。父と母と三人で乗った観覧車は、俺にとっての一番の思い出だ。両親は交通事故で、俺が中学生の時に他界した。俺は親戚の叔父さんに引き取られ、面倒を見てもらった。そして高校を卒業して小さな町工場に就職した。働いて十年が経ったある日、朝食を食べてテレビをつけると津島遊園地が今週いっぱいで閉館になるというニュースが流れた。最終日の日曜日は、あいにく仕事だったが、最後にあの観覧車に乗って思い出の景色をもう一度見たくなった。俺は仕事終わりに一人、津村遊園地に行った。辺りはすっかり暗くなり、客も少なくなっていた。チケットを買って観覧車に乗り込んだ。夜景が綺麗だ。
「雅人」
「えっ?父さん!?母さん!?」
そこには両親の姿があった。観覧車が一周するまでの十分間、俺は父さんと母さんと沢山話した。
ありがとう、会いに来てくれて。
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