第91話 水墨画アンバサダー
「君を水墨画アンバサダーに任命する」
大学の水墨画サークルに入ったばかりの僕に、唐突に突き付けられた言葉。
サークルの部長は、僕の顔を見てそう言い放った。
水墨画といっても、僕はサークルに入ったばかりで人に宣伝する程、水墨画を知っている訳ではない。なんとなく絵を描くのが好きだからという理由で入っただけだ。だから水墨画に関する知識なんて皆無だ。
「部長。ちょ、ちょっと待ってください。僕には無理ですよ。水墨画の知識なんて全くない初心者なんですから」
「いや、君が適任だ。むしろ君以上に適任な人はいないよ」
「なぜですか!?理由を教えて下さい」
「それは……」
「それは?」
「君がタコ星人だから、口から墨を吐いてその場ですぐに絵を描けるからだ」
「そうですか。納得しました」
僕はタコ星人。口から墨を吐けるからいつでもその場で水墨画を描ける。
そうか、確かに僕が適任かもしれない。
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