第90話 謎の種

庭の手入れをしていたら、植えた覚えがない場所に小さな芽が出てきていた。


「ん?これは何かしら」


その事を夕食時、家族に話した。


「一体、あれは何の種なのかしら…」

「僕が植えたんだよ」


息子は、自分が植えたのだと言った。


「何の種を植えたの?」

「うーん……わかんない。学校帰りにおじさんに話しかけられて種を貰ったんだ。凄く良い物だから植えてみなって言われてさ」


結局何の種なのか分からないまま、私は毎日、とりあえず水をやって育てる事にした。

あれから半年が経ち、季節は春になった。芽は成長してついに花が咲いた。花が咲いたら何の種か分かるだろうと思っていたけど、ようやく正体が分かった。桜だ。しかしそれから数カ月が経ち、夏になった。今度は、向日葵が咲いた。秋にはイチョウ。冬にはシクラメンの花が咲いた。


同じ木に季節ごとに違う花が咲く。

これはさしずめ、四季の種といったところだろうか。

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