第75話 気分屋の洗濯機

「お兄さんお兄さん。ちょっと見ていってよ。掘り出し物があるよ」


道に風呂敷を広げて露店をしている胡散臭い感じの男に声を掛けられた。


まただ…。前にもこのおっさんに話しかけられて、俺は気の利いた財布を買わされたんだ。


「お兄さん。最近、洗濯機の調子悪くない?」

「ああ…まあ確かにそろそろ変え時だと思ってけど」

「じゃあこれなんてどうよ。気分屋の洗濯機」


俺は男のセールストークに乗せられ、一万円。送料込みという安さもあって気分屋の洗濯機を買った。


数日後、気分屋の洗濯機が届いた。

早速洗濯物を入れてみる。

するとすぐに気分屋の洗濯機の意味が分かった。

黒い服を入れたのに、洗濯機から出すと青色の服に代わっていた。

この洗濯機は、入れた服の色が毎回変わる洗濯機だった。


色違いの服のバリエーションが増えて楽しめる反面、色は気分屋の洗濯機の気分次第。好きな色は選べない。それが悩みだ。

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