第29話 曜変天目茶碗

終了まであと三時間。突如、ヤプーオークションに出品されていたのは、国宝の曜変天目茶碗。曜変天目茶碗は、天目茶碗の中でも最上位であり、漆黒の器で器の内側には、星の斑文が散らばっており、まるで宇宙のように見えるとても神秘的な茶碗だ。曜変天目の製作方法や作者は不明であり、まだ謎が多く、それもまた魅力のひとつである。


幼い頃、テレビでやっていた骨董品の鑑定番組。俺はそれを母と見ていた。母が曜変天目茶碗を見て「綺麗な器ね」と言った。幼い俺は「大きくなったらお母さんにプレゼントするね」と言うと、母は「嬉しい。じゃあ約束ね」と言った。俺はそれをずっと覚えていた。俺が曜変天目を手に入れたい理由は、それだ。

しかし無情にも秒単位で価格が吊り上がっていく。当然だ。まだ世界に三点しか確認されていないからだ。これは新たな四点目。レプリカでもいいから母にプレゼントしたかったが、残念ながらどうやら本物らしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る