きったねぇ爆弾

田村サブロウ

掌編小説

鍛冶屋の村に盗賊団が攻め込んでから、もう3日になる。


衛兵たちががんばってるおかげで村の被害はまだ大したことはないが、そろそろ彼らの体力も限界に近づいていた。


なにかひとつ、ピリッとした打開策は無いものか?


ああでもないこうでもないと、会議所で衛兵たちが考えあぐねていたときだ。


リアカーを引いた一人の少女が現れて、こう言った。


「衛兵さん。私が作ったこの爆弾を使えば、盗賊団を追い払えるッス」


リアカーの荷台の中には、黒い鞠のような球体が何個もあった。


少女いわく、それらの球体が武器職人見習いとして彼女が作った爆弾とのこと。


一人前でない、見習いの職人が作った武器に不安を覚える衛兵たち。だが、時が過ぎても良策は思いつかず、衛兵たちは爆弾を使うことにした。


力自慢の衛兵たちが盗賊団の野営拠点めがけ、少女のお手製爆弾を投げていく。


爆弾はつぎつぎと地面に到達し、爆発。その様子を、衛兵たちは奇妙に思った。


火と煙を伴う一般的な爆弾のイメージにそぐわない、中身が飛び散るだけの地味な爆発が起こったからだ。


所詮は見習いの小娘が作った武器かと、衛兵たちは落胆。

だが、直後に起きた異変に衛兵たちは息をのんだ。


盗賊団の団員たちが、パニックになっていたのだ。


下手したら本物の爆弾以上に恐怖を抱いているのかも――そう思わせられるほど、地獄絵図に陥っていた。


盗賊団の腕利きの団員はほとんどが逃げ出した。


わずかに団員は残ったものの、すでに衛兵たちは数の有利を得た。


最終的に盗賊団は村の金品に近づくことすらできず、衛兵と盗賊団の戦いは衛兵の大勝利で終わった。


祝勝会の宴が村をあげて行われる。


お手製爆弾で勝利の立役者となった見習い職人の少女は、宴の主役だ。


豪勢な食事、酒、歌。村人は平和の嬉しさに震えた。


そんな中、少女が作ったお手製爆弾、その仕組みを探ることに話の流れが向かったのは自然なことだろう。


だが、見習い武器職人の少女はなぜか爆弾について話したがらない。


食事の席では話したくないというのだ。


もったいぶることはない、構わないから話せ。

遠慮するな、今日は無礼講だ。


そんな村人の言葉に根負けし、少女が話したお手製爆弾の秘密とは、


「盗賊団の嫌がりそうなものをたっぷり凝縮したッス。肥溜めから集めた糞尿は基本として、ゴキブリ、フナムシ、ヘビ、クモ、ムカデ、腐ったタマゴにラフレシアのエキスをドブでコトコト煮込んで――」


「わかった、わかった、もういい!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

きったねぇ爆弾 田村サブロウ @Shuchan_KKYM

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ