第25話
ちゅうううううううううう
「あん♡あああああ! ああああああん♡」
自分でもこんな声が出るのかと驚くくらい甲高い声を上げてしまった。
勇者は私の乳首にむしゃぶりついている。私と魔王を引き離す方法って、まさかこれ?
「ちょ! ま、まっへ」
乳首にこんな刺激を受けた経験がないのでろれつも回らない。ただ成すがままにおっぱいを吸われている。
ハッと視線を横に移すと
まさか、
「ま…ひゃ♡あん♡…おう、いま、あ♡あ、な…た、どうなって」
全く止むことのない吸い付きに変な声が漏れてしまう。少なくとも私へのダメージは十分にあるのだが、魔王は
「クソっ! 勇者め。まさかこんな方法で余を苦しめるとは」
まさかの乳首吸い作戦が効いているようである。
「うおおおおおおおお!!」
「むううううううとおおおおおおおおお!」
「ら……らめ……ひゃおとめ……きゅん」
勇者に乳首を吸われながら必死に抵抗の声を上げるが
バゴオオオオオオ!!!!
「え? 一体、どういうこと?」
足腰に力が入らずぺたんと座り込みながら胸を腕で隠す。
「あ、あの。大丈夫……じゃないですよね。すみません。
「あ、う……うん」
「その……お……おっぱいが魔王というのは
私には魔王の都合があるように、
「そっか。私を助けてくれようとしたんだね。ありがと」
「
「おっぱいが健在だから魔王もたぶんいると思うんだけど……」
「フフフ。小僧、よくぞ勇者を退けた。余が本来の力を取り戻した暁には一番の配下にしてやろう」
「いえ、お断りします。オレはもう、やりたくないことはやらないって決めたんです」
「
もしかして暴走族を抜ける決心が付いたのかと思った矢先、新たなトラブルが私に降りかかる。
「このデカ乳いいいいいいいい!」
突如空から降ってきたのは背中から光の翼が生えたプラートルさんだった。その手には光のオーラに包まれた杖が握られている。
「
その杖を白刃取りのように受け止めてくれたのは
「は、はは。
「腕っぷしには自信があるので。ケガはありませんか?」
「
お礼を言うと
「なんですの! あなたもご存知でしょう。その品のないデカ乳が魔王であると。あまつさえその乳で勇者様を誘惑するなんて……!」
「いや、
「
「ムート。ああ、オレの聞き間違えじゃなかったのか。てっきり
「そんなことはもういいのです! あのむしゃぶり付き方は完全にこのデカ乳に
やっぱりプラートルさんの怒りの対象は魔王ではなくおっぱいの持ち主である私に向いている。やり方がおかしかったとは言え、魔王だけをどうにかしようとしてくれた勇者の人徳が伺える。
「いたたたた。やっぱり
その勇者がちょっと転んだみたいなテンションで起き上がる。結構鈍い音がしたのにケガはしてないのだろうか。
「
「ごめんごめん。
「は?」
「だって
「ああああああ!」
「え? なに?」
「な、なんかあの車おかしくないか?」
「うーん。言われてみると確かに。速度が遅いしフラフラしてるような。まさか居眠り運転⁉」
「くそっ!」
「おーーーーい! 後ろから車が来てるぞー!」
そう叫ぶものの、近くを歩く女の子達はおしゃべりに夢中で気付かない。
「ねえ、ムートさん、プラートルさん。ここは一時休戦にしない? 目の前の善良な市民を見殺しにして魔王討伐なんて
「いけません勇者様! 誰も邪魔する者がいない今こそが絶好のチャンス。このデカ乳女ごとその剣で!」
プラートルさんは本当に勇者の味方なのかな。私に対する当たりが強すぎるよ。
「……魔王。貴様はこちらの世界で彼女と協力してたくさんの悪人を捕まえているという噂を耳にした」
「ふん! 余が完全に復活するまでの暇潰しだ」
「
そう質問する勇者の瞳はとても澄んでいて、おっぱいを吸われたことを許せそうな純粋さがあった。
「
「ええ、
「プラートルさんと違って話がわかりますね」
「ちょっとデカ乳! なに勇者様と通じあってますの!」
いい感じの雰囲気をぶち壊す神官プラートル。向こうの世界のみなさんはこの人の本(性を知ってるのだろうか。
「中の人ごと斬るのは簡単なのですが……誰も傷付けずに世界を救うというのは難しいですね」
「私もそう思います。こちらが手を出さなくても、自分ではどうにもならない所で争いが起きて人生が狂っていく」
だから私は、そんな人生を少しでも良い方向に歩いていける手助けをしたい。
「
「はい!」
「…………いくぞ
勇者の言葉を無視して魔王は私に声を掛ける。あれだけの身体能力を持つ勇者が魔王に託すのだから、やっぱりこいつの力は本物なんだ。
「あの
「やっぱり、胸を隠してたら……」
「本気を出せぬな。やはり封印とは辛く悲しいものなのだ」
「……ですよねー」
私は渋々腕を胸からどかす。重力に引っ張られた二つのおっぱいがポロリと零れ落ちる。
「いくぞ。全速力のロケットおっぱい!」
「あひゃあああああああ!」
おっぱいがラグビーボールのような形になるやいなや、私の身体はおっぱいに思い切り引っ張られる。ブラのホックを外しただけでなく、完全におっぱいを
「あばばばばばば」
「どうした
「あぶあばばば」
人間の限界を超えた速度によって風圧で私の顔はおもしろいことになっていた。とても返事をできるような状態ではなく、ただひたすらに足を動かした。
「え⁉
今追い抜いたのは
ひとまずこれで
それにしても、あの子達は本当におしゃべりに夢中になってるわね。こっちに気付いて何かアクションを起こしてくれれば事故は回避できそうなんだけど、このおっぱいを見られるのも恥ずかしい。やっぱりトラックを止めて居眠り運転を注意するのが一番警察官らしいってことなのかな。
「……
「あばべ?」
頭の中ではいろいろ考えられるけど、やっぱり言葉を口にすることはできない。
「ふん。喋れないのならちょうどいい。最後に言っておくことがあってな」
最後? なんの最後?
「余が全力を出せばあの程度のスピードで動く物体を止めることなど造作もない」
はいはい。さすがが魔王様ですね。頼りにしてます。
「本来の姿なら片手、いや、指一本でも足りるだろう」
わーすごい! どんな交通事故も未然に防げそう。
「だが、今はこんな姿だ。まさに全身全霊を
まさか、私の気力を使い果たしてその隙に身体を乗っ取るんじゃ⁉
「こんなことを言うのは柄ではないのだが、まあ、その、なんだ。なかなか楽しかったぞ。転生したのが
は? 急に何言ってるの? そんなお別れみたいな。認めたくないけどあなたは私の一部なんだから、魔王だけ消えるなんてありえないでしょ。
「余を見くびるでないぞ。無傷だ。
「あば! あぶべぼ!」
魔王に伝えたいことがたくさんあるのに言葉が出ない。
急に大きくなって困惑した自分のおっぱい。
ブラで締め付けると大人しくなる魔王。
二人で解決した事件の数々。
楽しかったのは私だって同じ。鬱陶しいと思うこともたくさんあったけど、一生この魔王おっぱいと過ごすのも悪くないかなって思い始めてたのに。
「フハハハ! 余は魔王だぞ。人を泣かせるのが本来だ。どうだ? 悔しいか?」
悔しいよ。一方的に別れを告げて、私は何のお礼も言えないなんて。
「では、さらばだ」
ぽよよよよ~~~~~~ん
おっぱいがトラックに当たるとまばゆい光を放った。
その
でも、確かなのは、トラックは止まり、誰もケガをしなかったこと。私のおっぱいが以前のような真っ平らになったこと。
そして、勇者とプラートルさんは姿を消していた。魔王がいなくなった世界には存在が許されないとでも言わんばかりに、忽然と。
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