第8話 文芸部とロシアっ子
「……でー、どうしてサンドラが書庫に閉じ込められるようなハメになったのか教えてもらってもいい?琴音」
少し威圧的に言う。一応言っておくが、琴音も普通の日本語を喋れることは喋れるのだが、文芸部室に入るとスイッチが入ってしまうらしくあの口調になってしまうらしい。
そのスイッチをオフにするためにも強く言う必要があった。琴音特有の言い回しとかいちいち翻訳するの面倒だからね。
「あーまさか空の友達とは思わなくてな…その節は申し訳なく思うのだが、一応こちらにも言い分があるのだ!」
薄い胸をはり、声を強く張り言った。
うん。まぁそうだろうな。あいつはそんな初対面の人を書庫に閉じ込めることに快楽を覚えるような奴ではない。
「いや、まぁ大した理由でもないかもわからんなのだが、彼女はいきなりこの部屋に入ってきてこの部屋を見渡すやいなや、ようわからん呪文を唱えながら大暴れしちょたんだ。そこで、中からでは絶対に出られない書斎に放り投げたって訳である」
サンドラが大暴れした理由とその呪文が何かっていうのが気になるが、おいおい聞けば良いと思って僕はなるほどと頷く。
「……今書いている作品にも、美少女が閉じ込められるシーンがあったりして、その参考にも……」
「おい」
「なんで聞こえてるんじゃ!ボケェ!鈍感な主人公はこういうの聞こえないはずであろう!!」
「なんで僕が怒られるの!」
鈍感だとか、主人公だとかさっぱり意味がわからない。
ていう感じでまぁ琴音の動機は掴めた訳だが、やはり気になるのはサンドラがなんて言ってたかだ。
視線をサンドラに投げる。
琴音も気になっているようで、サンドラの方をじっと見つめている。
そんな二人の視線を感じたからであろうか、やや遠慮がちに俯いて目線を下にずらす。
すると、頬をかっっっー!と赤く染め、ぼそりと呟くようにしてこう言った。
「…ソラくんが、いないなぁーとおもって……つい、ロシアごで……」
サンドラの頬の赤らみがうつるようにして、たちまち僕の顔に紅葉を散った。
羞恥のあまり、耐えきれず視線を琴音に移してしまう。
僕と目線が交わった琴音は何かを悟ったようにほほぉーんとからかったような口調でにやけ、なにか思いついたように、頭をもたげる。
「お前らデートをしてくるのだ!」
……はぁ?
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