第7話 書斎とロシアっ子
時計をみると4時30分を回っており、文芸部に顔を出せそうだ。因みにきのうまで絶賛部活動は春休み期間だったため、部活に参加するのは3週間ぶりくらいだ。やっほい。
文芸部があるのは、第2棟。僕たちの教室や面談室があるのが、今居る第一棟なのでここから少々移動が必要だ。2棟へと続く1階の渡り廊下を歩き、そのまま右へ角を曲がる。そこにあるのは2階へと続く階段。その階段の隣にある、1目見ただけでは倉庫や空き部屋と間違えられそうな教室が文芸部室である。
錆に錆びたドアノブを回し、キィーと軋んだ床のような音とともにドアを開ける。
文芸部室内は、古びた味のある雰囲気でいまは4月初頭のはずなのに、黒板には『12月4日』と書いてあるのが廃墟じみていて心地よい。会議室とかにありそうな大きな円型のテーブルが部室の真ん中に置かれている。
部室に入った僕とテーブルについて対照にたった一人座っている女子生徒が
身長は割と低めでパッと見小動物を連想させる。ショートの髪にはほどよくウェット感がありつつ、ゆるめのカールを施したパーマヘアには内側から空気を膨らませるようにふんわりとしている。一見、しっとりとふんわりで矛盾しているように見えるが、実はそんなこともなくいい塩梅にバランスが取れていて、陰気なイメージがある文芸部だがバッチリ、オサレもしてくるため文芸部の看板娘的存在。そして何かと成績も優秀。
久しぶりに文芸部くることによって高まる胸の鼓動を感じつつ、やや抑え気味に声をかける。
「おーす、久しぶり」
「久しいかな。桜井くんよ」
気づいた人もいるかもしれないが、結構癖がある奴なんだよね。琴音。
多分、これから何言っているか分からない場面も多々出てくると思うから、『桜井翻訳』と共にお送り致します。本当にあってるか分からないけど。
「
「おー!まじか。意外と早く書き終わったんだな。割と真面目に楽しみにしてた」
軽い足取りで400字づめ原稿用紙を受け取りにいき、自分の定位置である琴音の左隣の席に座ろうとするが…あれ?なんか誰かのバッグが僕の椅子の上に置いてあるぞ。
どこか見覚えのあるような気がしないでもないが、とりあえず聞いてみることにした。
「琴音?これって誰のバッグ?」
「あー、
何を言っているんだろう。琴音が誰かに惚れた?全くもって話が繋がってこない。
当惑し尽くし、多分側からみると吹き出しに大きなはてなマークが出ているであろう。
そんな僕を置き去りにするように琴音の説明は続く。
「紆余曲折ありましてな、
ここで説明は終わりのようだ。
説明が終わり、徐々に冷静さを取り戻してくる。
……光、髪、抱合、琴音が惚れた………光、髪、抱合、あっ!金髪の事か!?となると、あのロシアっ子JKの事か?それなら、琴音が惚れたのも説明がつく。
と、そこまで考えて、僕は頭を横にブンブンと振り、思考の奥底に押し入れようとする。
いや、でもサンドラがここにいるはずが……
──ある!!
僕は重大なことを忘れていたらしい。
サンドラが居るのもそれもそのはず……
「仮入部のことすっかり忘れてたぁぁぁぁあ!」
全てが合点いった僕は急いで書斎に閉じ込められたサンドラを助けるべく、重たい書斎の扉を開け放つ。そこには、泣きじゃくる金髪天使さまの姿があった。
「そぉーらぁぁ、くぅぅぅぅぅーーん!」
僕の姿を見るなり、僕の元へ駆け寄り抱きついてくるサンドラであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます