第6話 あらたなとロシアっ子
怒涛の転校生紹介からおよそ1週間が過ぎた。
この1週間の間で起こったことというと、サンドラが僕たちの関係を
『
と認めてみたり、(後でカレシとカノジョの意味を説明すると赤面してた)案外サンドラがクラスの連中と仲良くなってたり、特に僕とサンドラが付き合ってるホラ話が出回ってたりしてもこれといったクラス内での大きな問題はなかった。そう、クラス内では。
これは僕自身の思うところなんだが………
──今となってはサンドラの方が僕より人気があって、どうやって接したらいいかわかんねぇぇーー!
という問題が出来てしまった。
当初の目的はサンドラをクラスの輪に入れてあげることだった筈だが、その目的はものの1週間で解決済。そんな今となっては僕の役目なんか他にあるわけもなく、お役目返上ぉぉーー!とこの物語の主人公を返上しようと思う。またね。次回作に乞うご期待を。
「はぁ……、桜井、それ真面目に言っているのか…つまらない人間になったなぁ。こりゃぁ」
その旨を我クラスの担任でもあり、僕の所属している文芸部の顧問でもある先生──豊永莉乃──に、いつの日と同じく放課後の面談室で伝えたところ、心底失望したように開いた手で、顔上半分を覆う。
「ええ、そうですとも。こんなカクヨムで投稿してから1週間経ってもレビュー数が全然稼げなさそうなライトノベルの主人公なんてごめんですよ」
「あのなぁ…桜井、忖度なんて脳みそに『そ』字もない私だから、はっきり言おう」
豊永先生は自慢のセミロングヘアを翼のように翻し、なにか僕を試すかのような目付きになり、こう言い放った。
「お前のその目を見てると、まだ諦めがついていないような気がするし、その自分の意思を無理くそねじ曲げているような気がして至極気持ちが悪い。自分に嘘をつくのはやめろ。いつか本当に大切なものとクソほどどうでもいいのものの分別がつかなくなるぞ。常にえりわけなくてはならないものはお前の手のひらにある。この事を忘れるな」
この言葉は僕がほとんど燃え尽きてしまったと思っていた活力に再び火をつけるのに十分だった。
今までの僕は表面上では自身なさげな傍ら、1年学級委員として失敗なく責務を全うしてきた僕なんだ、事は良い方へなんとか転ぶだろうと思っていた節があった。
けれど、なんだこの有様は。彼女をリード出来ることを前提に考えていた挙句、そんな彼女にも先を行かれ、勝手になんとかなるだろうと思っていた甘ったるい考えに裏切られたと感じてしまう自分自身に目も当てられない。
「それで、結局のところどうなんだ?お前はサンドラにとっての何になりたい?それを見つけるのは桜井、お前の仕事だ」
……僕は……サンドラにとっての……
そんな簡単に答えが出ないまま、今日はお開きになった。
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