第5話:婚約破棄追放
「ヴィオレット、ユルシュルはちゃんと包帯をしているのでしょうね」
隣の控室から腐れ外道のイヴォンヌ声が聞こえてきます。
実の母親の癖に私の顔を手先に焼かせた極悪非道の悪女。
そのくせ焼け爛れた私の顔を見るのが嫌で包帯をしているか確認する。
とっとと殺してやりたいですが、今はまだ我慢です。
全てはユルリッシュ国王とヴィルジール王太子の性根、本性を確認してからです。
「はい、今はまだ膿がひどいので包帯をされておられます。
包帯の表面が膿で変色してしまっていますが、ちゃんと包帯はされておられます」
「何をやっているのですか、直ぐに包帯をかえなさい。
部屋の窓も開けて空気をも入れ替えるのです」
「お言葉ではございますが、部屋の空気を入れ替えると部屋が寒くなり過ぎます。
それではユルシュルお嬢様のお体に障ります」
「家臣の分際で私に口答えするの、もういいわ、お前は解雇します」
イヴォンヌは調子に乗り過ぎですね。
ちょっと怖がらせてやりましょう。
「母上、騒ぐのはお止めください、傷が痛みます。
それ以上騒がれると、母上をお恨みして呪ってしまうかもしれませんよ」
「ひぃいいいい、止めなさい、娘の癖に母親を恨み呪うなんて、なんて恥さらしな」
「だったらこれ以上騒いで娘を苦しめるのは止めてくれますか。
それに、ヴィオレットを解雇するというのなら、暴漢に襲われて火傷跡に苦しむ娘の世話を、母上がしてくださるのでしょうね」
「なんで高貴な私がそんな下賤な事をしなければならないのですか」
「では、実の母親が苦しむ娘の侍女を解雇して、何の世話もせずに放棄するというのですね、さぞ社交界で面白い噂が広まる事でしょうね」
ドアを開くこともなく隣の部屋からの舌戦ですか、笑ってしまいますね。
「私は不愉快です、もういいわ、ここから申し伝えます。
ユルシュルの顔の傷跡は王太子妃には相応しくないと判断しました。
王家とプランケット公爵家の名誉を守るためには、こちらから婚約を辞退するべきだと私が判断して王家に申し入れました。
王家も婚約辞退を認めてくれましたので、有り難く思いなさい。
それと、貴女の傷は王都にいるよりも田舎で静養した方がいいでしょう。
ホワイトリー伯爵に話をしてありますから、明日にでも屋敷を引き払って伯爵領に行きなさい。
そう、そう、私は慈悲深い母親ですから、貴女を一人では行かせませんよ。
日頃から貴女と親しいロドリグ、サロモン、ヴィオレットの三人を連れていくことを許可してあげます」
つまりは王家と相談して婚約を破棄して追放するという事ですね。
王家も公爵家も総力をあげて私を治そうとしないという事ですね。
分かりました、ホワイトリー伯爵家が管理する未開地に行かせていただきますよ。
そこで思い出した前世の知識で何ができるか確かめて、キッチリと報復させていただきましょう、イヴォンヌ。
「娘として母上に一つだけお願いがあります。
ア・バオ・ア・クゥーだけは連れて行かせてください」
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