第5話 自己紹介
列の先頭の席である俺のところに集まってきた5人を見る。
(ぜ、全員女子か……まあ仕方ないよなクラスの男子の人数って俺含め9人しかいないし。)
他の列で俺と同じような奴はいないかと見渡す。すると廊下に近い方の列で一人、輪から外れている前髪で目元が隠れた男子生徒を見つける。
(あれは……確か星月蒼って奴かな。可哀想に完全にハブられてやがる。)
俺はクラスで同じ男子生徒だけは何とか覚えている。早速仲間外れ感が出てる星月君みたいにならないようにと気を引き締め集まった皆に向き合う。
「っと、じゃあ軽く自己紹介しようかな。昨日の生徒会の話で知ってるかもしれないけど、俺は如月翼って言います。あだ名とかは特にないんで好きに呼んでください。趣味は特にないけど運動も読書も嫌いじゃないよ。これからよろしくね!」
皆の目を見つめて、話し始めは声をあまり大きすぎないように、でもぼそぼそと喋らないように意識した。そうして話し終われば俺は優しい顔になるよう笑顔を作る。実は昨日こっそり鏡の前で練習したんだよな。
「…おー、よろしくねー、翼っちて呼ぶよー」
「おーけー」
「よ、よろしくお願いします。如月君ってよびますね。」
「ああ、よろしく。」
「……よ、よろしくお願いします。き、如月さん。」
「よろしくな」
「よ、よろしくですわ。如月さん。」
「(ですわ?)ああ、よろしく」
「んー。」
ワンテンポあったけど皆からの反応が良くてちょっと嬉しい。加恋は相変わらずだが……
「じゃあ次は加恋だな。」
「榊原加恋。趣味は眠ること。よろよろー。」
「そ、そんだけかよ加恋。」
「うむ。」
「よろよろー。加恋っち。」
「よろしくお願いします。榊原さん。」
「……よ、よろしくお願いします。さ、榊原さん。」
「眠ることは大事ですわ。よろしくですわ、榊原さん。」
秒で終わり、皆からの反応にコクコク頷く加恋の次は総代をやっていた子だ。
「佐倉紫音って言います。総代をやらさせてもらったので名前を知ってる人もいると思いますがこう見えて自分で言うのも変だけどポンコツです。運動神経ダメダメです。なので気軽に話しかけてくださいー。あっ、趣味は空を見上げることですー。よろしくお願いしますー。」
「しゅ、趣味は人それぞれだしなー。よろしく佐倉さん。」
「よろしくお願いします。」
「天然。よろ。」
「て、天然だとは思ってないんですけどねー」
「おー今日もいい天気だから見上げ日和ってやつだねー、よろしくー紫音っち。」
「ふふっそうですね、よろしくお願いします。」
「……よ、よろしくお願いします。さ、佐倉さん。」
「はい、よろしくお願いします。」
「勉強を教えて欲しいですわね。よろしくですわ、佐倉さん。」
「いいですよ。いつでも聞きに来てください!」
佐倉さんの次は髪の毛が茶色く、パーマをかけてる女の子だ。
「次はあたしだねー。あたしは佐々木妃花でーす。妃花って呼ばないと無視するぞー。勉強は苦手だけど学校オシャで超気に入って頑張って入ったんだー。特技はあだ名をつけることでー趣味はショッピングかなー。可愛いもの系めっちゃ好きだから今度みんなで学校近くのお店巡りしようよー。よーろしくねー!」
「おう、よろしくな妃花っち。」
「翼っちそれはあり寄りのありだね!」
「陽キャ。よろ妃花。」
「陽キャじゃないよー。よろしく加恋っち。」
「ふふっ、よろしくお願いします妃花ちゃん。」
「紫音っち、その呼び方も好き!よろしくねー。」
「……よ、よろしくお願いします。さ、佐々木さん。」
「のんのん、妃花、それともっとおっきな声でー」
「えっ、えっと……ひ、妃花さん、よ、”よろしくお願いします”」
「よろしくー」
「よろしくですわ。妃花さん。」
「よ、よろしくですわ!」
妃花の自己紹介が終わり対照的な女の子が一歩前に出る。
「え、えっと。さ、佐藤美和です。あ、えっと、しゅ、趣味は読書です……。あの、よ、よろしくお願いします。」
「よろしく佐藤さん。」
「陰キャ。よろ。」
「おい加恋。やめなさい。」
「い、いえ……実際そうですし。だ、大丈夫です。」
「うむ。私もどっちかというと陰キャだから仲間。」
「そういうことか。」
「よ、よろしくです。」
「どんなの読むのー?」
「え、えと少女漫画とか……です。」
「へー、おすすめあったら教えてねー美和ちゃん。」
「私も知りたいです。」「私も教えていただきたいですわ」
「は、はい。」
最後にですわ口調の美少女が自己紹介を始める。
「最後ですわね。私は白鷺裕子ですわ。白鷺財閥の娘として一通りの習い事をしていますのでいろいろなことが出来ますわ。その中でもバイオリンやピアノといった楽器が趣味になりますわね。茶道や舞踊もできますけど好きではありませんわ。皆さまよろしくお願いしますわ。」
「お、お嬢様だー」
「お金持ち。(金づる……)」
「……いい加減にな加恋。」
「何か言いました?」
「よろしくな」「な、なんでもない。よろ。」
「ええ、よろしくですわー。」
「裕子っちー。お嬢様っぽいことしてー。」
「えっと、スカートをこう持って、こ、こんな感じですわね。」
「すごーい。」
「……(お嬢様!)よ、よろしくお願いします白鷺さん!」
「身を乗り出してどうされましたの?よ、よろしくお願いします佐藤さん。」
「よろしくお願いします。お姫様。」
「あなたまで、どうされましたの佐倉さん。」
皆でお嬢様やお姫様と言いあったり、笑いあったりとひとしきり話して、気が付けばにぎやかになっていた。
「おーい、お前等まだ行かないのか」
「暁先生?って他の奴らいねーじゃん。みんな、取り合えず行くぞー。あと、加恋起きろー」
「ん……っは」
「やば。ほら、美和ちゃん行くよー。」
「ひ、妃花さん。ま、待ってくださいー。」
「私たちも行きましょう、白鷺さん。」
「そうですわね。行きましょう佐倉さん。」
駆け出していく俺たちを見て暁輝夜はふっと笑い雲一つない空を見て一人言葉をこぼす。
「やはり生徒を持つのはいつの時代も面白いものだな。」
****
席に座り手元の資料に再び目を通す。赤き瞳に映るのは日本語でも外国語でも何でもないこの世界の文字。
『報告書
秩序の白兎よりWORLDの観測者カグヤに報告
最優先事項
門番との共鳴より旧簒奪者の封印はもってあと一年。それまでに守り人が育つ確率は30%である。注視が必要、万が一があれば門番に介入許可を求める。
優先事項
簒奪者による我々が感じ取ることが出来ない現象の発見とその人物の判明を急ぐことがORIGINから通達されている。真理時計から猶予は6年と確定している。簒奪者の心意把握が必要だ。絶対悪であれば早急な封印措置をORIGINが派遣し施す。
アポカリプスを除いた過去の絶対悪4例から推察する必要もあり。
記憶改変(γ―X) 記憶操作による判明不可現象
完全魅了(Σ―X) 開拓者の心身消失
存在指定(δ―X) 世界から開拓者と簒奪者以外の絶滅
対象変化(Ω―X) 入れ替わりによる開拓者の消滅
アポカリプス 観測者クラメ、管理者ヒルダを含んだ一つの世界(λ―X)の完全消失。ORIGINに影響し、機能停止が起こった結果、10億年の活動停止が強いられたこの悲劇だけは繰り返してはならない。
確定事項
門番が判明。星月蒼
守り人を発見次第、観測者カグヤから門番の名を通達する必要あり。
現生観測者が判明。佐倉紫音
観測者カグヤによる開花を促しつつ、管理者への昇華を見守る必要あり。
開拓者が判明。如月翼
簒奪者と会う可能性が一番高いため、β―G観測者ハクアによる記憶介入を予定。
以上』
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