閑話 β-G ある春の日
あれから一年がたった。
私は部屋の窓から外を見上げる。
どんよりとした暗い雲で今日までの変わらない私の心みたいだ。
「光ー、ここにご飯置いておくからちゃんと食べなさいよ」
お母さんが部屋の前から去っていく音を聞いてからドアを開ける。
置かれているのは今日の朝食だ。
私、如月光は一年前から引きこもりだ。
引きこもっているのは兄さんの部屋。
時が止まってしまったこの部屋に私はずっと住んでいる。
あの日、家に帰ったらお母さんが泣いていた。
お父さんもすでに帰ってきていた。その時にお父さんが泣いているのを初めてみた。
兄さんは………………。
スマホの充電が切れていたので帰ってくるまでなにがあったのか知らなかった。
今でも悔やんでる。
あの日友達と遊ばなければ。
兄さんと一緒にいればよかったと。
あの日から今日までで家を出たのは葬式の日だけだ。
兄さんの葬式には大勢の人が来ていた。
その中に昔兄さんとよく小学生の頃遊んでいた同じアパートに住んでいる人が泣きながら何かを謝っていたけど何だったんだろう。
私たち家族は兄さんを失ってから笑顔が減った。でも兄さんの部屋に引きこもってしまった私を見て、お母さんはあまり仏壇の前で泣かなくなったし、父さんはあの葬式以降まったく泣いていない。
私だけがあの日にとらわれている。
私が遊びに行くとき「行ってらっしゃい」と声をかけてきた大好きな兄さん。
それなのに帰ってきたら冷たくなった大好きだった兄さん。
朝食を食べて私のものになった兄さんのベットに潜り込む。
「………………ぐすっ………………兄さん………………」
今日はあの日から一年。
「会いたいよ………………」
頭の中には後悔しかない。
夢を見た。
兄さんと過ごした日々の夢だった。
かけがえのない大切な思い出。
**129387235**如月光**β-G**対象化検討開始**
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます