第15話 翼と「翼」の夢
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「おーい翼、帰りにカラオケいこーぜ」
「おー、行こう」
「安いところでなら俺も行くわ」
「待て待て、俺も行くぞ」
良くつるむ男4人で学校帰りに駅近のカラオケ店へ向かう。
店でフリータイムを選んで部屋に向かう。
「何歌う?」
「やっぱアニソンだろ」
「俺はボカロかなー」
「今日は俺が飲み物取ってくるわ」
「テキトーに頼んだわ」
「俺も」
一人が飲み物を取りに行く。
一人はメニュー表を開き勝手にポテトを注文。
一人は適当に曲を入れる。
飲み物を持ってくる奴は絶対一つ変な色の飲み物を持ってきて「おい飲んでみろよー」なんて言う。結局みんなで飲むことになるが。
俺たちはカラオケのたびにいつもこんな感じだ。俺も皆に変な色の飲み物を持ってく時もあるし、飲まされる時もある。
そんで、笑いながら、時に大声で、アニソンやボカロを歌う。
めちゃくちゃ楽しい。
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今日は待ちに待った映画の日だ。
「このアニメ、絶対映画化すると思ってたわ。」
「せやな」
「やっぱ、売れてんもんな」
「俺原作読んでないアニメ勢だからネタバレなしな」
「おけ」「りょ」「実はあいつが……」
「「やめとけって」」
映画を見終われば店で昼ご飯を食って映画の感想を言い合う。
「面白かったー」
「やば、あれって伏線だったんか」
「そうそう」
「やっぱ、あそこはカットされたかー」
ハンバーガー片手に話す俺たち。
食い終わればゲーム機を取り出し通信して遊ぶ。ここで食ってるから2時間は居座れるななんて思いながら。
「よっしゃおらー」
「ふぁっ、強すぎ」
「ないわー」
「俺は逆走するぜ!!」
「やばw」
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「うわーテストつんだ」
「翼は?」
「ぎり30点」
「うらやま」
そこらしかであがる悲鳴。定期テストが返却されたのだ。
「お前何点だった?」
そう言って見る隣の奴は頭が良く95点。ちなみにクラスでよく一位の奴。
「流石っすわー」
「よくとれるなー」
「模試もA判ばっかやろ」「俺、Eしかとったことねー」「それはワロタ」
「席座れー。お前らーもっと勉強しろー。来年、受験だろー。気ー引き締めろー」
先生から言われてもがやがやとうるさい教室。
いつものことだから先生も苦笑いだ。
「今回赤点の奴、来週補習授業あるからなー。紙見とけよー」
「あーまじかよ」
「来週は休みだぜ」
「ふざけんな、俺と変われ」
「暇だしアニメ一気見しよ」
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「久しぶり」
「おう翼、彼女出来たわ」
「リア充爆発しろ」
こいつは久々にあった小学校時代のよく遊んでいた友達だ。
「お前の学校って男同士で付き合ってるやついんの?」
「まあ、男子校だし俺の学年はいないっぽいけど先輩とかはいるらしいぞ」
「まじかよ、ネタだと思ってたわ。」
もう5年は家族以外の女の子と話していない。
「まあ俺には2次元があるし」
「お前、まじかよw」
若干友は引いているっぽいけど俺は2次元に染まっている。
俺の部屋にはクレーンゲームでとったフィギュアやラノベやらが積まれ、壁にはタペストリーを張りまくっている。
久しぶりに会った友とは互いに価値観が変わってしまっていることがなんとなく伝わり、その日は飯に行くだけで終わった。
次の日は学校でアニメの話をして、そいつとの話の内容は綺麗に忘れ去っていた。
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「兄さんは彼女作らんの」
「いや、うち男子校だから」
「だよねー」
少女漫画を読みながら話す光は今中学二年。父親とは最近全く話すらしてない。悲しんでるぞ。
母親から言われる小言から逃げて俺のオタク部屋に来ている。
一度俺が光をかばってから味を占めたのか、懐いたからかはわからんが俺を頼ってくる。
「光は兄ちゃんの趣味どうも思わんの?」
「うーん。きもいかな」
グサッと心に来る言葉が返ってきた。なんか胸が痛い。
「でも、兄さんのこと嫌いじゃないから別に」
「うん?なんか言ったか?」
「何でもない。独り言。ジュース取ってきて」
「へい、へい」
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目を開けて時計を見ると既に朝の8時だった。
土曜日だから光も母さんも父さんもまだ起きてない。
洗面所に向かい鏡を見る。
映るのは中学受験を控えた俺の顔。
その顔は今までにないくらい張り詰めた表情だった。
家族は俺の顔を見て受験が近いから焦り始めたのだろうと思ったようだ。
机で過去問を開き座っていたら、受験頑張れと書かれたメモとともにおやつをスッと差し入れてくれた母さんに俺はありがとうと感謝を伝えた。
母さんが出て行ったのを見て過去問が置かれている前を向く。
開かれているのは算数のページ。
ノートは白紙。
俺はその日、その白いページに色を足すことはなかった。
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