第9話 変える日1
クラスに人が集まると俺たちは自然と自分の席に着いていた。
この関係性はなんとなく周りから見られたくないという思いからきているのだろう。
池崎や小林は入ってきてすぐに俺を見つけてジト目をしてくる。そういや小林には問題の解き方教える約束してたっけ。この様子じゃあ寸前まで池崎が代わりに教える羽目になったのだろう。
ケータイのメールを開くとジュースと二人から書かれていたので後でおごってやるか。
その日も授業はいつもより簡単だと思いながら終わった。授業内容はひたすらいろんな学校の過去問を解かされるだけだが大きなミスもなく、当てられればスラスラ答えられる程度には出来ていた。
美咲も昨日俺が教えたので先生に質問をせず帰宅するようだった。
勇気を振り絞りながら小さなメモ用紙を持って彼女に話しかける。
「美咲、これ」
「何、翼君?」
「えっと、あと少しで受験だけど、よかったらわからないとこ聞いたりしたいから、これ俺のメアド、良かったら」
「あ、うん、私も実は…」
そういいながら彼女もメモ紙を取り出し渡してくる。
「実はさっき問題解き終わって時間が余ってたから書いてたんだ」
「え、実は俺もなんだよね」
「なんか私たち同じこと考えてたみたいだね」
「そうだね」
すこし、照れながらもお互いに交換し合う。
「じゃあまた明後日、塾で」
「うん、またね」
高揚した気分のまま家に帰り、母さんに怪訝な顔をされたが気にはならなかった。
ちなみにその日の寝る前に、メアド登録したよー(*'ω'*) というメールが来てテンションが上がったせいか夢を見なかった。
****
次の日正輝は学校を休んだ。
昨日のことや水曜日は授業が5時間だということで気分よく学校について、友達と話して、田中先生が入ってきてから「あれ、珍しいな、柳田休みか」という言葉で水をかけられたような気分になった。
(そうか、今日が色紙の話が出る日か)
先生が卒業式までの流れに触れながら「なるべく休んで欲しくないな、俺もみんなと一緒にこの学校ともお別れだから」と少し寂しそうな顔をして話す。
(あー学級代表者の奴先生見てなんか思いついたみたいな顔してるよ)
その昼休み、学級代表者の彼は色紙について話し出す。
俺は当然この流れを知っていて、立候補しない限りは大丈夫だろと高をくくっていた。昨日少し寝不足もあったので昼休みに入るなり突っ伏してたのもよくなかったんだと思う。
女子は花束を渡すことになった。
三波さんが渡したいと立候補する。
そして男子は…
「誰もいないのかー」
「お前やれよー」「いや、俺緊張するから無理ー」
「ちょっとー休み時間終わっちゃうよ」
「男子早くしてよー」
「こうなりゃ、多数決じゃあー」
「とりま、言い出しっぺは入れないとな、後は…」「じゃあ、あいつでよくね」
「今日、休みだし。やっぱり俺たちの代表っつたらなあ」
「だよなー、ってことで書いてくぜ」
「よし、おっけー、おい翼頼んだぜ。俺たちの色紙」
(えっ)
急に呼ばれた気がして目を開け起き上がる。
皆笑いながら話し合っていて、ふと黒板に書かれている文字に目を向けた。
花束 三波優衣
色紙 〇如月翼 正正正
墨田学 一
(は、なんだこれ)
ちょうどチャイムが鳴る。
「おーい、ホームルーム始めるぞー」
「やば、早く消せ」
「なんかやってたのかー」
「なんでもないっす」
「まあいいか、ほら席に着け」
俺は放課後、先生から受験に必要な学校の書類を渡すということで職員室に呼ばれたため皆に色紙のことを話す機会はなかった。
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