第8話 友という関係
教室に入ると自然と会話を止め、俺たちはそれぞれの席に着く。
美咲は少し名残惜しそうな感じだったように見えたが気のせいだろう。しっかり話したの初めてだし。
席に座ると既にいた同じクラスの皆は振り返り、何故か俺の方を向いていた。
(ん、なんだ?)
いつも、学校ではみんなと一緒になって騒ぐが塾では後ろで静かに勉強をしているからこんなに注目されることがないため、少し落ち着かない。
(さっき話してたからかなぁ)
まあ誰も話しかけてこないしいいか、と思いながら美咲の方を見ると既に授業の準備を進めていたので、俺もしっかりと切り替え、準備し先生を待つのだった。
「じゃあ今日の授業はここまで。受験まで後一回しかないから、過去問やってわからなかったところの質問しっかり持ってきてな。じゃあまた来週。」
「ありがとうございましたー。」
授業が終わってみんなそれぞれ質問しに行ったり、帰宅していく。
小林や美咲は先生に質問しに行っていて、池崎は塾の強制帰宅時間まで自習室にこもるらしい。
俺は国語ができるようになっていたし、ほかの教科を勉強したかったで先に帰宅した。
帰宅後、すぐに歴史を開き、ひたすら覚える。まだあれから二日しかたってないが、教科書の最初の方はこの世界の歴史として判別できるようになっていた。
それに、読み込み記憶する能力が向上しているようで、何度か見て覚えれるようになっていた。本当はノートに赤ペンで書いて、シートで隠して勉強するのが一番いいと思っているが、もう二週間もない今、記憶力に俺は全振りしていた。
一時間ほど勉強してから三日坊主になりやすい軽い筋トレをし、風呂に入ってその日は寝た。
その日の夢では俺が男子校に入ってみんなでゲームセンターに行ったり、カラオケをしていた時のものだった。夕方近くまで遊んで、皆と笑って、映画を見て、また次にいつ遊ぶか約束して…楽しい記憶だった。
そして…俺がこれから選ばないだろう運命であると薄っすら感じ始めていた。
次の日の火曜日、朝光に左手の包帯を巻いてもらい学校に行った。
特に学校は昨日までと変わらない授業で、卒業式の練習みたいなのがあったくらいだった。
とりあえず、校歌を口パクで済まし、当日の進行を触りだけ確認する。
そういや正輝が今日は静かだったな。
学校が終わり、家に帰ると俺はすぐにカバンを持って塾に向かった。いつもの時間だとあいつらも一緒になるからな。それに今日は何故か早くいくと良いことがある気がしていた。
バスを降りるとちょうどすぐ目の前の広場に美咲がいた。
早速声をかける。
(大丈夫、昨日よりは緊張していない。)
「こんにちは、美咲」
「あ、こんにちは、翼君。昨日教えてもらったの解けたよ!」
しっかりと俺の目を見て話しかけてくる。
目を見て話すことは苦手だけど、ちゃんと見る。
(やばい、顔赤くなりそう。)
「よかった、教え方おかしくなかったってことかな。」
「うん、本当にわかりやすかったよ。」
教室に着く。少し早くに着いたからまだ誰もいない。
すると彼女は黙り込み、真剣な顔で俺を見てくる。
(急にどうしたんだ。なんだ、何を言い出す)
固唾をのんで見守ると彼女は話し出す。
「昨日から気になってたんだけど…」
「うん…」
「なんで手に包帯巻いてるの?昨日と巻き方違うし、ファッション?」
「うん?」
あれ、なんか左の指五本とも包帯で巻かれてね。
ふと、朝光がこの方がかっこいいとか言いながら巻いてくれたなーと思い出しながら学校で言ったような話をしようとした。
(ちょっと休みの日にこけて突き指したんだよ)
「コンセントにシャー芯刺して感電した」
「え…」
二人の間に静寂が訪れる。そして…
(俺今なんていったあああああ)
「あ、いや、今のなし。えっと、あの」
「ぷふぅ」
「あのー美咲さん」
「う、ちょっと待って、ふふ、ふー、いいよ。」
あれ、なんかうけてる………
「うーんと、翼君さ。」
「は、はい」
「意外と天然なんだね、すごい親しみ感じたよ」
思っていたのと反応が違って少し驚く。
「えっと、引かない?」
「大丈夫、大丈夫。それに実はうちのお姉ちゃんも前に翼君と同じことしてたんだよね」
彼女は笑いながら姉のことを話し出す。
なんでも彼女の姉はちょうど中学に入った夏休みに俺と同じことをしたらしい。
それに彼女から興味深い話も聞かされた。
なんでも、そのあとから以前よりも美咲にいろんなことを教えてくれるようになったらしい。とくに話しかけてきた男の子には下の名前で呼ぶことを進め、それで逆に呼び捨てで呼ばれたらその子連れてきなさいなんて言われたらしい。
「たぶん、お姉ちゃんと話合いそうだよ。もし、受かったら絶対に合わせるね!」
「そ、そうですか…」
苦笑いしながらも一応了承しとく。
「あ、思い出したけど、ひょっとして昨日俺が皆に見られてたのって」
「多分皆その包帯してる手が気になったんだろうね」
やっと俺は納得したのと同時にこの手の原因について美咲に周りには言わないようにお願いする。だって学校の奴には突き指って言ってるし。
「えっと、美咲。怪我の原因は俺らだけの秘密な。学校でも皆には話してないから。恥ずかしいしさ」
笑いながら美咲に言うと何故か顔を赤らめながら頷くのだった。
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