第7話 side 鈴原美咲
受験まで二週間をきったなか、私は今日も塾に向かっていた。
志望校の英照中学は高校までがエスカレーター式で、三つ上のお姉ちゃんに影響されて選んだ。
英照中学はもともと女子学園で教会をイメージした学校だったらしい。
5年前に共学化推進の政策で共学化になったばかりで、女子と男子の割合は学年で7:3らしい。
前にお姉ちゃんから貸してもらって着た制服はブレザーで可愛いかったし、それに学校帰りに近くの喫茶店によってから帰ってくるのに憧れを持ったのが理由でもある。
この日、明日の宿題でわからなかった部分を考えながら横断歩道を渡っていた。
「こんにちは鈴原さん」
急に声をかけられた。
振り返ると確か私と同じクラスの男の子だ。
「えっと、こんにちは、同じクラスだよね!」
(名前なんだっけ…、後、なんで話しかけてきたんだろ…、まさか服に何かついてる?)
「えっと、如月翼って言います。前に、志望校聞いた時に同じだったから、今どんな感じかなーて思って声かけたんだ。」
(そうだ、この男の子覚えてる。6年生になってからの最初の授業前にみんな集まって、志望校どこにしたーって話してた時に私と一緒って言っててライバルだって思ったもん)
「あ、それは覚えてる、君だったんだー。そっか今名前と顔覚えたよ。翼君って呼ぶね。私は名前呼びでもいいよ。後、いい感じって答えとく」
(あの時以外話したことなかったからビックリしたな。それに、けっこう翼君は静かな感じの男の子だと思ってたから意外だな)
彼は後ろの方の席に座っていて休み時間も黙って勉強してるイメージだった。
「わかった。じゃあ美咲って呼ぶよ。あと俺はわかんないって感じ」
(呼び捨てっ!さん付けで来ると思ってたからちょっと恥ずかしいな。でもちょっとうれしいかも。)
呼び捨てなんて家族以外から言われたことないし、ちょっとドキドキしながらも話し出す。
「まあ後二週間だしね、お互い頑張ろ!」
「おう!」
「そうだ、翼君。明日の数学の問題難しくなかった?」
「どの問題?」
「最後の問題なんだけどさー」
「あー、あれはね……」
私たちは教室に着くまで宿題の話とか過去問の話をしていた。
勉強の話しているはずだから普通はこんなこと思わないんだけど…
(楽しいな、翼君と話すの…)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます