第6話 学校と塾

「おはよう」


 三人で他愛のない話をしながら教室に入る。

 ホームルームの5分前だ。

 小学校は3階建てで、学年が上がるとに上の階になるので俺たちの教室は玄関から地味に遠い。

 ギリギリに学校についてセーフなんて思ってても、教室についた頃には遅刻をつけられるなんてことはよくあった。


「おはよー」「おはよう」

「如月君手どうしたん!」「お、マジどーしたー」


 早速みんなから質問攻めにあう。


「いやー、ちょっと突き指してなー」

「あーやっぱり突き指だったんだー」

「なんだよ、よくある話かよー、さっき言えよなー」


 三波さんと正輝にそう言われる。

 まあコンセントにシャー芯刺して感電したなんていうの受けるかもしれないけど恥ずかしいじゃん。


 自分の席に着くと、俺の後ろと前の友達が声をかける。

 一人は背丈は俺と同じくらいの大柄な少年で、もう一人は眼鏡をかけた小柄な少年。


「お前、受験大丈夫かよw」

「ライバルが減ったな」

「いや、利き手じゃねーから」


 そう俺は勝手に大小コンビと呼んでる池崎隆いけざきたかし小林雀こばやしすずめに応える。

 こいつらは3年生の頃に同じクラスになって仲が良い。

 それに二人とも志望校先は違うが同じ塾に通っていて、付き合いも長い。

 ちなみにこの三人で頭が一番いいのは眼鏡をかけたインテリ感のある小林ではなく池崎だ。

 池崎は全国模試でいつも上位の成績を取っていて、たまに塾でわからないところを教えてもらったりもしていた。

 ちなみに俺は小林、そして塾は一緒じゃない正輝と同じくらいの学力で、たまにある外部の模試を受けたときはいつもこの3人で勝負していた。


「おはよう、みんなは今日も元気だなー」

 まだ騒がしいクラスにのんびりと入ってきたのは担任の田中先生だ。

 5年生になってからの担任で友達のお姉さんやお兄さんからもずっと人気があったらしい。

 そのことを聞いてから実際にクラス担任になった時はうれしかったし、面白い小話を授業中に挟んでくれるのが良かった。ただたまにギャグを話して滑ることが多く、ちょっと悲しくなっているところがまた良かった。


 早速先生に親に書いてもらった連絡帖を渡しながら手を見せて、怪我したことを話す。


「先生ちょっと左手怪我したんで、体育無理です」

「あーなるほど、わかった。気をつけろよー如月、お大事にな、それと見学は寒いから冷えないようになー」

「はい、ありがとうございます」


 田中先生は苦笑しながら連絡帳を返す。当然連絡帳には怪我の本当の理由が書いてあるからだ。


「じゃー出席とってくぞー」


 いつものように授業は始まり、6時間目までを塾の宿題をやったり、睡魔に負けたりしながら過ごした。


 放課後、一度家に帰ってから塾のカバンを持ってバス停に向かう。


「過去問の宿題むずかったな」

「国語だろ、途中で絶対意識失うわ」


 バス停には小林と池崎が話していた。

 同じ塾で、教室も一緒だから自然と俺たちは生き帰りも同じ時間になる。


「おーう」

「翼は宿題いけた?」

「今回からいけるようになった」

「なんだよ今回からってw」


 そんな話をしながらバスに乗りこむ。

 バスの中でも「受験やばいなー」とか喋っていると駅について降りる。


 バスを降りた反対側の横断歩道を渡った先に塾があり、歩いているとふとショートボブの女の子が俺の目にとまる。

 彼女の名前は鈴原美咲すずはらみさきという。

 頭が良くて可愛いし、皆にフレンドリーな子だ。


 そして、夢では始まらなかった俺の初恋の女の子だった。


 前の俺は彼女に対して緊張してあんまり話せなかったことを思い出す。

 それにもし受験に合格すれば彼女と喋るきっかけになるかもしれない。

 夜に見る夢のせいか俺は精神年齢がだんだんと高くなっていたのかもしれない。

 二つの心が混じり一つになり始めているのだろう。


 後ろの二人はマイペースに歩いていたので俺は前にいる彼女のところまで行って声をかける。


「こんにちは鈴原さん」

「えっと、こんにちは、同じクラスだよね!」


 急に声をかけられたことに驚いていたがすぐに笑って話してくれる。

(あー名前覚えられてないか……、そうだよね…、話したのあの時以来だからな…)


「えっと、如月翼って言います。前に、志望校聞いた時に同じだったから、今どんな感じかなーて思って声かけたんだ。」

「あ、それは覚えてる、君だったんだー。そっか今名前と顔覚えたよ。翼君って呼ぶね。私は名前呼びでもいいよ。後、いい感じって答えとく」


 明るく笑いながら彼女は言う。


「わかった。じゃあ美咲って呼ぶよ。あと俺はわかんないって感じ」

「まあ後二週間だしね、お互い頑張ろ!」

「おう!」


 そんなこんなで俺達は話しながら教室へ向かっていくのだった。

 ちなみに後ろでにやにやと見てる二人組がいたが俺は無視してた。というかこの時の俺は美咲との会話で頭がいっぱいだっただけです。












  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る