第4話 夢と人生と翼2
タイマーを50分にセットして国語のページを開く。少しだけ不安を感じながらもまずは文章を読んでみる。
当然夢の中で問題を解いてる場面は流れたが流石に内容までは思い出すことがなかった。
けれど、
(あれ、こんなに内容頭に入ってくるっけ)
やっぱりだ、確実に昨日よりも理解できる。
以前であればなにを意味しているのか分からなかった筆者の言いたい意図がわかる。
それと一番はっきりしているのが漢字の読みや単語の意味が分かるのだ。
物語文ではない説明の文章問題は特に横文字や漢字が多く分からずに時間を取られ今までは60点を取れればいい方で散々な点数になっていた。
(え、これってこういうことだろ、これはこの部分を意味してて…)
問題が解ける喜びを感じつつ20分残して全て解き終わる。
これはいけたと思い即座に回答ページをめくり丸付けを行う。
92点だった。今までで一番いい点数だ。
8点は記述のところで完全にはあってないだろうからと解答を照らし合わせてこれくらいだろうという自己判断だ。
正直ここまで取れるとは思っていなかった。
思えば夢でも国語の自己採点で嘆いていた場面があった気がする。
やっぱりあれはあくまであの時の人生だから今の俺の人生は変えられると希望を持つ。
それに知識は確実にあると思い興奮が冷めないまま今度は国語の次のページから始まる社会の問題を解き始める。
そして最初の一行目で思いもよらなかった出来事が起こる。
第一問 長く続いた江戸時代の中で代表的な徳川将軍家で歴代の7人の女性将軍がいるが初めて将軍についた女性は何代目の誰か漢字で書きなさい
…あれ、そもそも女性将軍ってなに
いやでも7人の女性将軍って確か…
脳裏に二つの考えが浮かぶ。
次の問題にも目を通す
第二問 天下統一を果たした織田
これは簡単だな…
え、全員誰だここに載ってるの…
おかしい、頭が回らなくなってくる。歴史上にはいないはずの知らない武将の名前や見たこともない絵が浮かんでくるのだ。
一度過去問を閉じて歴史の教科書を最初からめくっていく。
ページをめくるたびに段々と納得とともに不安も大きくなり、最後のページまでパラパラとめくる。
教科書を閉じ上を見上げて眼を閉じる。
(あーこれは前の世界の歴史なんだな)
歴史上の人物が違う、でも時代の移り変わりにおかしな点はなかった。
確かに今はちゃんと令和だし、大きな事件が起きていなかったり、その事柄の名前が変わっているなんてことはなかった。
でも俺は今大きな不安が押し寄せていた。
(歴史の勉強しないとやばくね)
受験まで残すところ後二週間の出来事であった。
昼になり、国語で上げて社会で落とされた俺はリビングに行くと母さんが軟膏を持ってきてすっかり忘れていたことに気づいた。
「あ、忘れてた」
「母さんも忘れてたから仕方ないわ、ほら見せて」
とお互いに笑いながら左手を見てくれる。
ちなみに親指から中指までの三本が包帯で巻かれている状態だ。
手早く軟膏を塗ってもらい換えのガーゼをあて包帯を巻いてもらう。
「これで良し、ほら勉強頑張って」
「母さんありがとう」
母さんに感謝を述べるとキッチンから二つのおにぎりを乗せたトレーを持って光が言う。
「光がお兄ちゃんに作ったからこれ食べてお勉強頑張って」
「うわー、ありがとう光、お兄ちゃんめっちゃ頑張る」
そのまま俺の部屋の机の上までもっていき置いてくれる。
今朝やったみたいに頭を撫でてやると顔を緩めながら走って部屋を出ていった。
(今日も俺の妹は可愛い………よし、取り合えず社会以外やるか)
あれから妹の作ったおにぎりを食べ、ほかの教科を解いていった。
社会であったように理科で人物名が違うこともあったが法則や定理は変わっていないようだったので87点も取ることが出来た。
まあ間違えたところは前の世界も今も変わらず勉強不足ということだ。
勉強って忘れるものだしね。
算数に関しては満点を取れた。
まあ夢を見る前から90点は取れていたから、確実にできるようになったってことかな。
夜ご飯を食べて左手が水につからないように注意してお風呂に入る。昨日はお風呂に入らずに濡れタオルで拭いて寝たから凄く気持ちがいい。
それにあの夢を見たからかより一層暖かさが身に染みて眠くなる。
(風呂出たらもう寝よう)
いつもは軽いスクワットとかをしているけどそんな気力もなくて、髪を乾かしベットにもぐりこんだ。
(そういや明日からまだ学校あったな…)
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