要注目

 休日の午後に呼び出された僕が夏目さんの家に向かうと、洗濯物が干されたベランダへ誘われる。下を覗くと、紐みたいな紫のショーツが植木に引っかかっており、恥ずかしいから回収してと夏目さんから頼まれる。放っとけば夏目さんのだと分からないのではと僕が言うと、マンションの上の人に気付かれると言う。確かにと思った僕は路上から塀に登って精一杯手を伸ばすが届かず、それを見た通りすがりの中年男にどうしたかと気遣われた辺りから大事おおごとになってきた。人だかりができ、わざわざ誰かが呼んだ植木屋が五メートル近い梯子の頂上から、これ誰のですかとショーツをかざすが、勿論夏目さんに名乗り出れるはずがなく、僕の顔面まで真っ赤になる。


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第七十五回お題「届く」

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