獣道

 人類の起源に還るという獣道が都内近郊の雑木林の中にあるとは、随分あっさりとしたものだった。僕たちは調査名目で訪れたが、僕の密かな目的は夏目さんといることだった。獣道は木々の向こうに細々と伸び、住宅地の喧騒がたちまち遠のいた。春なのに空気が蒸していて、暑い暑いと言いながら僕たちは衣類を脱いでいった。下着になってもまだ暑く、前屈みになって上り坂を上るうちに、いつしか両掌が地を付いていた。思うさま四つ足で駆ける爽快さに僕が吠えると、隣を並走する、全身毛むくじゃらになった夏目さんが共鳴の雄叫びを返してきた。僕たちは今初めて互いが深く繋がったことを感じながら、人類の起源に向かって猛然と疾走していった。


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第七十四回お題「道/路」

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