ぼくの話 23

二分の一成人式ということで、参観日に生徒を代表して作文を読んだ生徒、もう1人が洋子だったのだ。

男子と違ってまともなことを書いていた女子は、誰が作文を読むのかが決まらなかった。先生も『 誰が呼んでも良いよ。』と任せっきりだったので、ジャンケンやあみだくじ、果てには多数決なんかをして決めようという話になっていた。

既にぼくに決まっていた男子たちは早く帰りたくて文句を言って急かしていたが、女子たちは聞く耳を持たずあーだこーだと話し合っていた。

最終的に誰が読むのがいいか推薦をすることになって、委員長の洋子になったのだ。

『 洋子ちゃんなら、絶対大丈夫だよね。』『 洋子ちゃんなら、任せられる。』

と口々に言い、本人も『 早く帰りたいから、それでいいよ。』と了承をして決まったのだった。


当日、彼女が話した夢は、確か『 教師になること』だった気がする。彼女の母親は昔教師で、結婚を機に辞めて専業主婦になった。母親から働いていた時の思い出話を聞くうちに自分もなりたいと、そう願うようになったと話していたと思う。

自分の番をドキドキとしながら待つぼくと違って、堂々と自分の夢を発表した洋子。話し終わった後の彼女の顔をチラと見るといつもの真面目そうな顔の中に、緊張と誇らしさが混じりあって存在しているのに気づいた。他のみんなはあの顔に気づいたのだろうか?

洋子のお母さんも気になって参加した父兄の顔を窓側から順番に見ていくと、ちょうど真ん中に洋子のお母さんを見つけた。その目には自分の娘に対する優しさと、少しだけ哀愁の混じっていた。


今思えば、参観日の発表や委員会などの面倒なことが決まって回ってくる彼女はどんな気持ちだったのだろう。頼りにしているとみんな言っていたが、面倒事を押し付けていただけでは無いのか?

彼女に『 みんなから、大役をずっと任されるのってどんな感じだった?』なんてデリカシーのないことは聞けない。


ぼくのいじめの話になった時に真っ先に発言してくれたのは洋子だった。

先生からもみんなからも頼りにされる真面目な優等生、それが洋子の印象だった。

でもそれも彼女が努力をして得た印象なのかもしれない。


彼女の怒り、悲しみ、そして絶望に触れ、やっぱりあいつらは碌でもない奴らだと実感した。

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