ぼくの話②
さて、高校に通うと決めたもののどうすれば良いのかさっぱりと分からなかった。
高校は小中学校と違い、義務教育では無いから試験を受けて合格しなければ通うことは出来ない、ということは知っている。
でも、試験はどう受けるのかが分からなかった。
中学校の先生に聞けば早いのだろうが、僕は小5から学校に通っていないので中学校ももちろん行っていない。そんな僕に先生の知り合いなどいるわけが無いのだ。
第一に、僕は15年前に中学校を卒業したことになっている。どれだけ長く勤めている先生がいたとしても、流石に15年以上勤めている人はいないだろう。
ケータイは…持っていない。ケータイを使えば色々なことを調べられるとテレビでやっていたが、そんな物を持っているとさらに部屋から出てこなくなると父親が言い、貰っていないのだ。
パソコンも同様の理由で持っていない。
頼る人もいない、聞く人もいない、調べるものもない。
新たな人生を踏み出そうという決意の道は、早くも閉ざされそうに感じた。
…聞く人なら、いる。
今さら頼っていいのかどうか分からないけれど、両親だ。
小5の時から散々迷惑をかけて、「働きたい」ではなく、「高校に通いたい」だなんて、そんな我儘が許されるのかは分からないけれど、僕にはもうこの状況を打開するためには、2人に頼るしかないと思った。
そう思うと、心の奥底が突然、鉛を埋め込まれたようにズシンと重くなった。何もしていないのに身体もだるく感じる。
今日話すのは、やめよう。身体の調子も良くないみたいだし、時間だってもう遅い。それにいきなりそんなこと言われたってビックリする。ビックリさせて熱でも出したら大変だ。
明日…明日…明日にしよう。うん。そうだ明日また話せば良いんだ。
その時、部屋の外からドアをノックする音が聞こえてきた。
「優也、晩御飯をここに置いとくからね。ちゃんと食べるんだよ。」
今、両親のことを考えていたから驚いてしまった。
返事をしないのはいつもの事なので、母親は特に気にした様子もなくドアのそばを離れていった。
そっとドアを開ける。
今日は僕の好きな唐揚げだった。栄養バランスを考えてか、野菜もちゃんと付いていた。
もうこんなに大きくなって、部屋から出ないから運動不足で、そんなの関係ないだろうに。
…やっぱり話すのは明日にしよう。
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