第88話 闇を屠る双流星
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ユニークスキル:【ポイント・エージェンタ】Lv5
Lv1⇒獲得経験値上昇【大】
アンロック条件:なし
Lv2⇒獲得経験値上昇【極】
アンロック条件:剣、斧、槍、弓スキル、魔法を合計1個修得(現在10個)
Lv3⇒ポイント・エージェンタ(改)
アンロック条件:剣、斧、槍、弓スキル、魔法を合計3個修得(現在10個)
Lv4⇒ポイント・エージェンタ(真)
アンロック条件:剣、斧、槍、弓スキル、魔法を合計8個修得(現在10個)
Lv5⇒チョーズン・オブ・エージェンタ
アンロック条件:剣、斧、槍、弓スキル、魔法を全て修得(現在10個)
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〇チョーズン・オブ・エージェンタ
ポイント・エージェンタの中のポイント・エージェンタ。
「自身」に対して経験値付与の能力を使用することができ、これまで獲得した全てのスキルをエクストラスキルに覚醒することが出来る。
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この力で思う存分戦える。
俺はもう悩まないぞ!
復活を果たした俺は二本の聖剣を装備し、大魔王メリッサを見据えると、彼女は血も凍るような眼差しを向ける。
「そういえば思い出したわ。勇者と聖女が何やら話をしていたわね。だけど、それで生き返ったから何だと言うの?」
「違うなメリッサ。お前はまだ俺達人類の強さを知らないんだ。今度こそこの戦いを終わらせるぞ!」
「フン。なら貴方の望み通り、ここで終わりにしてあげるわ」
メリッサの発言を最後に、闇の頂に立つ彼女が召喚した「闇勇者シリーズ」が襲い掛かってくる。
俺はこの5人に手も足も出ず殺された。
だけど、今の俺ならッ!
「――――チョーズン・オブ・エージェンタ――――!!」
俺の叫びと同時に全身をシュルシュルと光が纏い、自分自身と聖剣にありったけの経験値を付与する。
俺は始めて自分自身に経験値を付与した。
獲得経験値【1億倍】の自分にだ。
そして、これが【ポイント・エージェンタ】で経験値を付与されるという感覚……。
全身を急激に経験値が駆け巡るが、酔いや眩暈を全く感じない。
今なら何でもできそうだっ!
「らああああぁッ!!」
槍スキル「乱撃」で「闇勇者シリーズ」に二本の聖剣を横薙ぎに払う俺。
「……!!」
一瞬の出来事だった。
剣の勇者。
斧の勇者。
槍の勇者。
弓の勇者。
魔の勇者。
俺の剣撃に直撃した勇者全員は僅かに驚きを浮かべ、なすすべもなく塵となって絶命していったのだ。
「みんな……。もう……おやすみ」
ピッと聖剣を振り、大魔王メリッサを視界に捉える俺。
「『闇勇者シリーズ』を……一撃……っ!?」
急激に強くなった俺にメリッサは僅かに顔をしかめる。
今までの借りは返させてもらう。
今度はこっちからいくぞ!
俺は彼女の真下に移動し、「身体強化」で彼女に一太刀を浴びせようとする。
その瞬間、ユニークスキル【ポイント・エージェンタ】が進化した時同様、脳内に情報が流れてきた。
《斧スキル「身体強化」が覚醒しました。これより「飛行」可能となりました》
俺は……。
俺はコイツを殺すッッ!
すぐさま闇の世界を滑空し、メリッサに突進を試みる俺。
「ふふ。貴方にここまで来れるのかしら?」
フワリと後退しながら杖を振るメリッサ。
「――――
彼女は魔法陣を10門展開し、向かってくる俺目掛けて魔法を一斉に放ったのだ。
【大魔王】になった彼女の初めての魔法攻撃。
それは【魔王】だった頃よりも遥かに一発一発の強さと速さが見違えるほど進化していた。
だが、強くなったのはお前だけじゃないっ!!
俺の脳内には再度アナウンスが響き渡る。
《魔法「ファイアーボール★★★★」を獲得しました》
《ファイアーボール★★★★の熟練度が一定に達しました》
《魔法「ファイアーボール★★★★★」を獲得しました》
《ファイアーボール★★★★★の熟練度が一定に達しました》
《魔法「ファイアーボール★★★★★★」を獲得しました》
《ファイアーボール★★★★★★の熟練度が一定に達しました》
《魔法「ファイアーボール★★★★★★★」を獲得しました》
《ファイアーボール★★★★★★★の熟練度が一定に達しました》
《魔法「ファイアーボール★★★★★★★★」を獲得しました》
《ファイアーボール★★★★★★★★の熟練度が一定に達しました》
《魔法「ファイアーボール★★★★★★★★★」を獲得しました》
《ファイアーボール★★★★★★★★★の熟練度が一定に達しました》
《魔法「ファイアーボール★★★★★★★★★★」を獲得しました》
「――――ファイアーボール――――!」
「乱撃」で放たれた俺の魔法はメリッサの攻撃を全てかき消し、彼女にも「ファイアーボール」が命中していた。
「ぁ……ッつ!? 何が起こっているの!!??」
「来ることが分かっていればお前の魔法にはもう当たらないぞっ!!」
「おのれアルスッッ! ただのガキがッッ!」
聖剣の柄を握り締め、彼女への進撃を止めない俺に再び詠唱を始めるメリッサ。
「――――大魔王の剣――――!」
ズズズッと大剣を召喚した彼女は両手で禍々しいオーラを放つ武器を装備する。
そしてメリッサはまるで魔法よりも剣の方が得手かのように不敵な笑みを浮かべていた。
それが、彼女と衝突を直前にして俺が感じ取った僅かな違和感だった。
「誇って良いわ。この大剣を人間相手に使うのは初めてなの♪」
「それがどうしたッ!」
俺の聖剣と大魔王の大剣がぶつかり、鍔迫り合い状態になる。
力と力が衝突し、ガギギギギッ!とけたたましい音が闇の世界を支配していたが、その時間は僅か一瞬だった。
「……ッ!」
彼女の大剣に大きく弾かれた俺は空中を数回転し、体勢を整える。
眉をひそめる俺に対し、いつもの調子を取り戻したかのように微笑むメリッサ。
「ふふ。何度でも囁いてあげる。勇者レオンは貴方が殺した♡」
「ッ――!!」
今までの戦いの経験からメリッサには魔法よりも剣のほうがダメージが通る。
実際、俺の「ファイアーボール」はメリッサに直撃していたが、様子を見る限りではやはり魔法で彼女にとどめを刺すのはかなり時間を要するだろう。
しかし、「魔王の城」の時から感じてはいたが、メリッサはやはり剣術が異常なのだ。近接戦に持ち込んだ瞬間彼女は余裕を見せ始めたが、それを裏打ちする確かな実力がメリッサにはある。
先ず、メリッサの圧倒的力に飛ばされた俺だが、彼女の特筆すべき点は何も攻撃力だけじゃない。
彼女は俺の肩や視線を注意深く観察し、攻撃をする前から先読みをしているのだ。
現在、剛と柔を完璧に兼ね備えた彼女の剣術は【魔王】だった頃よりも更に磨きがかかっている。
だが……。
「メリッサ! 俺は経験値付与の能力で無限に力が湧いてくるんだ! お前の剣はもう俺には通用しないぞ!」
「ふふ。なら、この私を倒せるまでレベルアップすることが可能とでも言うの? それこそありえないわ」
「見てろよメリッサッ!」
コイツにはもう考える選択肢すら与えない。
踏み込みの一歩目から俺には加速が存在しないからだ。
俺は最初から最高速の動きでメリッサに距離を縮める。
「ッ……!」
予備動作の無い俺に焦りを感じたのか、大魔王の剣で咄嗟にスキルを発動するメリッサ。
「――――滅星――――」
しかし俺は巨大な大魔王の剣を右手の「聖剣アロンダイト」で防ぎ、すぐさま左手の「聖剣エクスカリバー」でメリッサの胴を払う。
「グううッ……! オノレッ!!」
血を吹いて宙を舞うメリッサ。
彼女は俺から一旦後退し、仕切り直しを試みるがそんな隙を俺は与えない。
俺は二本の聖剣を同時にメリッサ目掛けて振り下ろしていた。
ドドドォォンッッッ!!と数多の瓦礫を貫きながら遥か彼方へぶっ飛ばされる大魔王メリッサ。
「やった……か?」
絶命に十分な手ごたえを感じ、僅かに力が緩む俺。
しかし不意に、死角から殺気を感じた時には手遅れだった。
「――――
「――ッ!?」
ギリッと歯を食いしばりながら、空中で回転し、足場に着地する俺。
レオンを殺した一撃をまともに受けてしまったのだ。
どうやら今のメリッサは「闇勇者シリーズ」の召喚同様、代償無しにこの魔法を使用可能らしい。
HPが凄まじい速度で減少し、死に近づいていく俺。
それより、何が起こっている?
メリッサは二本の聖剣で確実に倒した感触があったぞ!?
そして……。
俺の疑問に答えるかのように魔法を放った方から飛んでくるメリッサ。
彼女は勝利を確信したのか、口元を歪めながら魔法を詠唱する。
「――――
これが答えか……。
自身と全く同じ姿の分身を生成することができる大魔王メリッサ。
俺はさっきまで偽物と戦っていたらしい。
「ふふふ、教えてあげる。私が一番好きな瞬間はね『俺達のこれまでは何だったんだ』って絶望に打ちひしがれながら死んでいく様を見ることよ」
「……」
「アルス、敗因は仲間に頼るからよ。今の私を見れば一目瞭然でしょ?」
魔王軍四天王、
勇者シリーズ、
闇勇者シリーズの存在全てを役立たずだと否定した彼女。
自らの配下に期待をしていた癖に、使えないと判断すれば勝手に切り捨てることが正解だと言わんばかりの発言に俺は心底怒りが込み上げてくる。
それに……。
彼女の言っていることは間違っている。
俺はメリッサに静かに憤怒をぶつけていた。
「本当にそうか? メリッサ?」
「どういうことかしら? 私の『
「――――チョーズン・オブ・エージェンタ――――!」
俺は彼女に自身のユニークスキルを目に焼き付けさせるため、バリバリバリッと経験値をありったけ自身に付与する。
「確かにお前のこれは命を蝕む一撃だ。だが、その度にレベルが上がれば死ぬことは無いっ!」
「まさか……ッ! 死の運命に抗ったとでも言うの!?」
「魔族のお前には、一生分からないだろ! この能力はみんなと一緒に困難を乗り越えてこなければ使えなかった!」
「興味……無いわッッ!」
憎々し気な表情から憤怒を浮かべる顔になった彼女は俺を始末するため再度詠唱を試みる。
「――――
《槍スキル「乱撃」が「乱撃(神)」に覚醒しました》
「無駄だメリッサッ!!」
「――――乱撃(神)――――!」
俺は二本の聖剣を縦横無尽に振り払い、大量の分身の心臓を両断する。
「ウウァァアアアアアアアアッッ!!!」
次々と消える分身が消える中、俺の視界には大魔王の剣で何とか攻撃を処理することができた本体唯一人が生存していた。
「これから俺は『乱撃(神)』を使いながら戦う。どこで分身を生成しようとお前の目論見通りにはいかないぞ!」
「そう……」
分身魔法を唱えることを止め、今度はメリッサから俺に突撃してくる。
いよいよ……。
最終局面だ。
俺とメリッサしかいないこの空間で、光と闇の剣が弧を描いて衝突する。
今まで彼女はどれだけ俺達が攻撃を浴びせようと手の内に何かを隠す余裕を見せていた。しかし今のメリッサにはもうその不気味な笑みは欠片も存在しない。
遂に本気を出し、言葉も発さなくなった彼女は一言で言うと「怪物」だ。
俺がどれだけレベルアップでステータスを上昇させ、反応速度を上げようと、必ず愛剣で応じてくるのだ。
俺は全ての思考を「メリッサ討伐」のみに集中し、ただひたすらに二本の聖剣による連撃を浴びせる。今大魔王を倒すこと意外は全て些事だ。
力任せに振り下ろされた彼女の大剣と聖剣がぶつかり、ダガァアンッ!と闇の世界に轟く。
「くっ……!?」
大剣に弾かれ、後退させられた俺は再度正面からメリッサに挑もうとする。
が、ずっとこの機会を伺っていたのか、遂に彼女の最終奥義が発動されていた。
「死ねアルスッッ!」
「――――
大魔王メリッサの
彼女の刀身の太さは闇で何倍にも膨らんでいた。
巨大な闇が俺に迫る状況。
しかし、俺は彼女の最終奥義に返す刀で一つのスキルを発動する。
「『チョーズン・オブ・エージェンタ』ッッ!! 俺に全部をくれっ!」
ズンッ!と闇の世界を震撼させるような大量の光を纏う俺。
だが、メリッサの突進は止まらない。
俺の聖剣は世界を反転させる程の光を帯びているが、彼女の大剣はそれを否定するに十分な圧倒的な闇だからだ。
まともに食らえば今の自分でも即死だろうが、俺は全ての命を絶つメリッサ渾身の突きに真っ向から挑む。
そして……。
俺はメリッサの闇剣を聖剣で大きく弾くことに成功していた。
凄まじい量の火花が散り、彼女は両の目を大きく見開く。
「なに……ッッ!?」
「メリッサ!!」
彼女の名前を叫んだ瞬間、脳内に最後の情報が流れる。
《剣スキル「流星」がエクストラスキルに覚醒しました》
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
〇エクストラスキル《
闇を討つ選ばれし真の勇者のみが使える最終奥義。終わることのない連撃は必ず相手を斃すことができる。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「これで終わらせるっっ! 何もかも!」
ありえない速さでメリッサとの距離を縮める俺。
「ううぅおおおおああッ!!」
俺の全部をこの剣に乗せるっっ!!
「――――
音速を超えて光速へ。
俺は夜空を駆ける流れ星の如く二本の聖剣で攻撃を浴びせ続ける。
防御なんか微塵も存在しない。俺は全てを聖剣に委ねていた。
もっとだ。
もっと速く動け!
限界を超えろっ!
真一文字の傷跡を次々とメリッサに刻み、俺は咆哮を上げる。
「落ちろ! メリッサ!」
俺の剣撃を避けることが出来ず、二本の聖剣に完全に捉えられた大魔王メリッサ。
彼女の瞳には憎悪が宿り、断末魔の叫びを上げる。
「ぐウゥッッ! アアアアルスゥゥッ……! オノレッッ! 認めないっ! こんなの……認めないわよオオオオォッ!」
決着を確信した俺はとどめと言わんばかりに最後の一撃を振り下ろし、メリッサを叩き斬った。
瞬間、彼女の身は粉微塵に吹き飛び、大きく爆散する。
「全部……。全部終わったよ……みんな…………」
瞬間、闇の世界がバラバラと砕け、まるで俺を祝福するかの様にあちこちから光が降り注ぐ。
こうして……アルス率いる勇者パーティの活躍によって、大魔王メリッサは最期を迎え、世界は平穏を取り戻していた。
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