パワハラ勇者の経験値を全て稼いでいた《ポイント・エージェンタ》は追放されてしまう~俺が居ないとレベル1になるけど本当に大丈夫?スキルが覚醒して経験値【1億倍】なのでS級魔法もスキルも取り放題~
第69話 【SIDEレオン】三位一体の究極奥義
第69話 【SIDEレオン】三位一体の究極奥義
「ぐっ……不味いっ!?」
冷風に当たった瞬間、俺の全身には氷が一瞬にして広がり、完全に氷漬け状態になったからだ。
駄目だ……。
動けないし、ダメージが入って死ぬ……。
全てを諦めかけた瞬間、
パリィィィインッッ!!
瞬く間に氷が砕け、俺は動きが取れるようになる。
「アンタの後ろに隠れさせてもらって何とかやり過ごしたわ」
「そうか……」
奴の氷魔法を拳で砕くとは……。
そんなデタラメあるのかと思ったが、コイツならありえる。
俺とメイは何とか無事だったが、剣聖は大丈夫なのか?
彼女の方に顔を向けた俺だが、剣聖は何食わぬ顔で魔の勇者と再度剣を打ち合っている。
コイツ……。
「絶対両断」で魔法をやり過ごせるなら、初めから俺の前に立っても良かったんじゃないのか?
そう思ったが、もう何も言わないことにする。
それからしばらくの間、俺とアリシアは魔の勇者に攻撃を与え続けたが、防御力がありえないくらい上昇しているため、ダメージが入る気配は一向に見えない。
駄目だ。ジリ貧状態だ。
俺達は一度たりとも魔の勇者の剣攻撃を受けられない。
しかし、一度奴と距離を取れば、非常に強力な魔法攻撃による追い打ちが入る。
とうとうアリシアも疲労がピークに到達したのか、魔の勇者に挑む回数は最初より随分と減っていた。
俺も魔の勇者から距離を取ると、奴は余裕そうに笑みを浮かべる。
「フフフ。メリッサ様、見ていてください。こいつらは一匹残らず私が始末しますよ」
俺とアリシアは呼吸を整えていると、メイが質問する。
「ねえ、アンタ」
「何だ?」
「アイツの一回一回の魔法が凄すぎるんだけど、こっちにも何か切り札が無いの?」
俺は素直に返答するか悩んだが、自身の情報を正直に打ち明ける。
「切り札はある。このスキルを使えば一撃で魔の勇者を仕留められる」
「はぁ!? アンタ馬鹿なの!? じゃあ何で今までそれを使わなかったのよっ!?」
「このユニークスキルを使うには三人で連携しないと使えないからだ」
「!」
「!」
メイは自分なりに結論を出したのか、露骨に大きなため息を吐く。
そして、彼女は真剣な表情でアリシアに顔を向ける。
「どうする、後輩ちゃん? アンタが決めていいわよ」
俺から顔を背けながら、自分なりの意見を伝えるアリシア。
「確かに。カイザータウロスを倒した勇者(クズ)に従うことが最善の確率は0.2%ぐらいあるかもしれません」
一応は俺の協力に賛成すると捉えていいだろう。
彼女の性格からして、反対なら真っ先に否定していただろうからだ。
「だってさ。それで……わたしたちはどうすれば良いの?」
「悪いが【勇者】のユニークスキル『三位一体』は俺も初めて使用する。技の発動まで時間を稼いでほしい」
このスキルは発動するメンバーによって技の種類や威力が変わる。
俺は脳内でスキルを発動する人物にアリシアとメイを選択するが、やはりそれぞれで信頼関係を築けていないからか、発動までかなり時間を要するみたいだ。
「だってさ。後輩ちゃん」
無言で一度頷いたアリシアは再度、魔の勇者に挑む。
俺はすぐさま集中し、『三位一体』発動段階に入る。
極限まで集中しろ!
海や湖に深く潜る感覚をイメージするんだ!
しばらく時間が経過するが、メイはとうとう痺れを切らしたのか、俺に問い詰める。
「ちょっと! いい加減早くして欲しいんだけどっ!」
「悪いが、まだだっ……!」
俺が動きを全く見せないことに違和感を覚えたのか、魔の勇者は俺に向かって魔法を詠唱する。
「クク……。私が見逃すとでも」
クソ……。
集中している間、俺は身動きが全く取れない。
発動まで持ち堪えないといけないのに。
「――――シャドウブラスター――――」
俺に向かって放たれる漆黒の光線。
しかし、俺を庇うようにしてメイが俺の前に立つ。
「オイ、メイッ!?」
「これで死んだらブッ殺すっっ!」
ギンと睨み付け、怒りを露にする彼女だが、怒っているのは俺もだ。
クソがッッ!
テメェが動けなくなったら意味ねェだろっ!
しかし、この魔法は一瞬にして俺達の前から消えていた。
シャキィィィィンッッ!!
アリシアが魔の勇者の放つ攻撃を両断していたからだ。
「初めっからそうしなさいよ! アンタ!」
「……」
アリシアは無言で俺達から顔を背け、肩にかかった髪を手の甲で払う。
態度は気に食わないが、コイツのおかげで助かった。
発動準備が出来た俺はすぐさま二人に向かって叫ぶ。
「行くぞ! メイ! 剣聖!」
準備が出来た俺は地面に手を付き、三人を囲むほどの巨大な魔法陣が現れる。
これで技の使い方は全員頭の中に入ったはずだ。
アリシアは装備している「無刀流」の剣を天に向かって掲げ、俺とメイは彼女の間に立つ。
「頼みますよっ!」
俺とメイはそれぞれ闇魔法と光魔法をアリシアの剣に付与すると、彼女の剣からは凄まじい煌めきを放っていた。
「これが『三位一体』の能力か……」
「凄いわ! これならいける!」
闇と光を吸い込んだことで、アリシアの剣の切れ味は何十倍もの威力を発揮するものへと昇華されていたのだ。
アリシアはとどめの一撃を決めるため、電光石火の如く魔の勇者を襲おうとするが、やはり奴がそれを黙って見過ごすわけがなかった。
「これで私を追い詰めたつもりか!」
詠唱に集中するためか、剣を収めた魔の勇者。
そして、彼の装備している本からは度し難いオーラが放たれる。
「――――
突如としてアリシアに向かって空から打ち降ろされる漆黒の魔法。
不味い……。
何て威力の魔法だ。
あれが魔の勇者の切り札か……!
俺は最後の魔力を振り絞り、魔法を詠唱する。
「――――ダークスフィア――――」
「――――ダークスフィア――――」
魔法と魔法が衝突するが、やはり完全には相殺できない。
クソッ!
今ここで全力でアリシアを守らないと全てが水の泡になる。
しかし、俺の魔法の後を追う形で、もう一つの魔法が放たれていた。
「――――ヘルボール――――!」
「なっ……!?」
バリバリバリッ!!っと黒玉に赤い稲妻を纏った魔法攻撃が有り得ない速度で飛んでいく。
ユニークスキル【魔女】の魔法かっ!
何て火力の魔法だ……!?
メイはこんな切り札を隠していたのか!?
……。
……。
いや、コイツ……。
爆発魔法だけじゃなく単体攻撃の魔法も所持してんじゃねェか……!
一瞬、俺は複雑な気持ちになったが、魔の勇者の魔法が完全に消えたことで、叫びを上げていた。
「進め!! 剣聖!」
「はあぁぁぁッ!!」
アリシアは渾身の力で剣を横薙ぎに払う。
「――――ゼロブレイク――――!」
いくら防御力が上昇した魔の勇者でも三人で放つ究極奥義に耐えられるはずが無かった。
彼女の一撃を受けた魔の勇者はドサッと両ひざを地面に付く。
「バカ……な。この……私が……こんな奴等に……メ……サ様」
大きな魔導書と共に塵となって消えた魔の勇者。
そして……。
これまでの大雨は嘘みたいに止み、雲の間からは陽光が射し込んでいた。
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