パワハラ勇者の経験値を全て稼いでいた《ポイント・エージェンタ》は追放されてしまう～俺が居ないとレベル１になるけど本当に大丈夫？スキルが覚醒して経験値【１億倍】なのでＳ級魔法もスキルも取り放題～

第75話 キリュウとの再会

「君たち大丈夫かっっ！？」

　族長ノノは俺とレオンの帰還に気づくや否や大声を上げる。

　俺達はボロボロの体を引きずりながら、何とか「最後の試練」入り口へと戻ってきていた。

「ま、あんた達のことだから、絶対生きて帰ってくると思ってたけど……。それにしても凄い怪我ね……」

　呆れている様子を見せながらも、どこか嬉しそうな彼女。

　もしかしたら内心は心配してくれていたのかもしれない。

「ああ……。後でメイの回復魔法をお願いするよ」

　彼女への治療を頼んだところで、ネネが俺に尋ねる。

「我が主よ！　それでっ、『星の欠片』は入手できたかのっっ！」

「うん……何とか手に入れたよ」

　俺は入手した「星の欠片」を取り出し、みんなに配る。

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〇アイテム：星の欠片

　「最後の試練」にて恐怖に打ち勝った者に贈られる、魔王討伐に必要不可欠なアイテム。魔王の放つ恐怖及び精神操作を無効化する。

　このアイテム、【勇者】の存在、「神獣石」を扱う獣人の存在、全ての条件を満たすことで、最終奥義を使用可能。

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「『死のオーラ』や呪いを克服するだけでなく、攻撃にも使えるのか……」

　レオンの呟きに皆が彼に注目する。

　「最終奥義」が具体的にどんな技なのかイメージがつかなかったが、魔王討伐の切り札になるとしか思えなかったからだ。

「全員で使うみたいだね。詳しいことは良く分からないけど……」

「恐らくだが、これを使えるのは一度しか無いと思う。だから、これはリーダーが判断して使うべきだ」

　レオンの提案に納得したのか、この場にいた全員が無言で頷く。

　どんな状況で使うか全く予想がつかないけど、使いどころを間違いないようにしないとな……。

　そんなことを考えていると、メイは俺にこれからについて質問していた。

「で、アルス。『死のオーラ』を克服するアイテムが手に入ったけどどうする？」

「ああ。一度アルス村へ行こうと思うんだ」

　「聖剣アロンダイト」を作ってくれる鍛冶師がアルス村にいるらしいが、俺は彼にお礼を言わないといけない。それに、向こうにいるアリシアにも「星の欠片」を渡す必要があった。

「分かった。なら次は全員でそこに『転移』しよう」

　レオンがそう返事したことで次の目的地は確定したが、彼はスキルを使う体力を使い果たしている。

　俺達は一度休息を取ってから、族長ノノと別れ、「神獣の里」を後にしていた。

☆

「どわあああああぁぁっっ！！　男の家に勝手にあがってくんなやっ！」

　アルス村に到着したが、転移先は村の入り口ではなかった。

　どうやら村長さんの様子を見る限り、俺達は突然彼の家に押しかけてしまったらしい。

「レオン……」

　彼のあまりにも滅茶苦茶な「転移」スキルの使い方に、流石に村長さんも怒りを露にする。

「なんや、お前かっ！　いきなり大勢でおしかけてくんなやっっ！」

　確かに村長さんの言う通り、この家の広さに対して俺、レオン、メイ、ネネは確かに多い。

　しかし、レオンはそんな彼の怒りを平然とスルーする。

「ちゃんとやってるみたいだな、キリュウ」

　キリュウ？

　と疑問に思ったが、状況からして恐らく村長さんの名前なのだろう。

　キリュウさんはなおもぶつぶつ文句を言っていたが、俺と目が合うや否や、ニッと笑みを浮かべる。

「おおっ！　久しぶりやな英雄アルスくん！　相変わらず頑張っとるらしいやんっ！」

　キリュウさんは前回発生した繫殖期以来の再会だが、相変わらず持ち前の明るさで接してくれる。

「お、お久しぶりです……」

　ペコリと大きく会釈をする俺だが、視線はキリュウさんの持つハンマーに向いていた。

　実は先程から彼の持っているハンマーが気になっていたのだ。

　先程から何かを叩いていたように見えるが……。

　いや……。

　そんなわけ……ないよな。

　レオンがここに転移してきたのは、アルス村の村長に挨拶をしに来ただけでであって、「聖剣アロンダイト」を作れる鍛冶師はこれから会うはずだ。

　しかし、俺はキリュウさんの後方に目をやると、剣を作る炉が視界に入ってきた。

　ま……。

　まさか……。

「あのぉ……もしかしてですけど……『聖剣アロンダイト』はキリュウさんが？」

　俺の恐る恐る聞いた質問をきっかけに、満面の笑みを浮かべるキリュウさん。

「おお、そうやでっ！　勇者にまだ教えてもらってへんかったんか！　アルスくんのために鋭意作成中や！」

「ええっ！　成功確率とか大丈夫なんですか！？」

　驚きを隠せなくなった俺は脊髄反射的に声を上げると、彼はぷんすかと怒り出す。

「失礼なヤツやなっ！　こう見えてもワイはアルスくんぐらいの年の時は凄かったんやからな！」

　し、知らなかった……。

　確かに、初めて会った時から普通の人ではないという印象を受けていたが……。

　まさかこんなところでお世話になるとは……。

　とはいえ、これで魔王メリッサに挑む手筈は整ったはずだ。

　キリュウさんが「聖剣アロンダイト」を完成させ次第、俺達は「忘らるる大陸」にある魔王の城に向かう。

　俺の思考がレオンにも伝わったのか、彼はじっと俺の顔を見据える。

「アルス。ここから先はもう引き返せないし、残りの『勇者シリーズ』との連戦も予想される。武器の準備はしっかりしておけ」

　レオンの指示をきっかけに俺もみんなに説明を始める。

「ああ！　みんなもまだ時間はあるから各自装備を整えておいてねっ！」

「分かったわ！」

「うむ。そうじゃなっ！」

　メイとネネが力強い返事をすると、キリュウさんは呆れながら呟く。

「なんちゅー場所で作戦会議しとんねん……」

「そ、そうですね……」

　とにかく、俺達はキリュウさんの「聖剣アロンダイト」完成まで、残りの時間をアルス村で過ごすことにした。