パワハラ勇者の経験値を全て稼いでいた《ポイント・エージェンタ》は追放されてしまう~俺が居ないとレベル1になるけど本当に大丈夫?スキルが覚醒して経験値【1億倍】なのでS級魔法もスキルも取り放題~
第66話 【SIDEレオン】アルス村での最後の繫殖期
第66話 【SIDEレオン】アルス村での最後の繫殖期
4……8……12……16。
ダンジョンの近くに到着した俺は周囲のキングミノタウロスの数を把握しながら、すぐさまメイとアリシアの元へ駆け寄る。
キングミノタウロスは何故かその場で完全停止していることに違和感を覚えたが、疑問は後にする。
「オイッッ……!!」
血まみれで倒れている二人に声をかけると、メイは半分目を開けてケホッと咳をする。
「後輩ちゃんは意識を失っているだけだから大丈夫よ……」
アリシアは生きているのか分からないくらいピクリとも動かないが、今はメイの言っていることを信じるしかない。
畜生ッッ!
これでコイツらに何かあったらアイツに合わせる顔がないぞっ!
歯ぎしりをする俺に対して、メイは平然と続けて説明する。
「わたしはただの分身だから囮に使って良いわ。HPが0になったら自動で消えるだけだから」
「フン。冗談を言えるくらいの余裕はあるらしいな」
「アンタ……。まさかアイツらと戦うんじゃないでしょうね!? 今すぐアルスを呼ぶべきよ」
「いや、それは無理だ。アイツらは『神獣の里』にいる以上、すぐにはこっちに連れてこれない」
「なら……どうするつもり?」
「俺は体力が回復したんだ。やれるだけのことはやってみる。オマエは自分と剣聖の治療でもしてるんだな」
「む――」
メイが言葉を発した瞬間、俺は「転移」スキルを使用し、二人をアルス村へ飛ばしていた。
何故なら尋常じゃない殺気から今すぐ臨戦態勢に入らなければならなかったからだ。
「少シハ戦エソウナ奴ガ来タカ……」
俺の正面にはキングミノタウロスより更に一回り大きい巨躯のミノタウロスがいた。
キングミノタウロスとの違いとして体格差もあるが、全身が灰色をしており、金色に光る円形の盾を装備していた。
「何だオマエは?」
見たことのないミノタウロスに俺はすぐさま問い詰める。
「我ノ名ハ、カイザータウロス。全テノ魔物ノ頂点ニ立ツ存在……」
ハッタリではないのだろう。
事実、カイザータウロスと名乗る魔物に「鑑定」スキルを発動した結果、戦闘力は18万程度あったからだ。
この数値から脅威度は文句無しのSSSでいいだろう。
それに、カイザータウロスは6万程度の戦闘力を持ったアリシアを簡単に倒している。
これはアルスと「勇者シリーズ」ぐらいの差がある。
戦闘力は3倍近くの開きがあれば、格下が相手を倒すのは非常に困難になる。
だからアルスには単独行動をするなと王都で説明したのだが、今はそんなことどうでもいい。
俺は周囲を見渡し、キングミノタウロスが綺麗に陣形を広げていることに違和感を覚える。
どうやら、このカイザータウロスはキングミノタウロスを自身の意のままに命令することが可能ということか……。
「フッ。貴様ニ我ヲ倒セルノカ? 勇者ヨ」
「どうでもいい。俺はただ目の前の邪魔な敵を倒すだけだ」
「我ニ楯突クトハ……愚カナリッ!」
刹那、後ろにあったダンジョンからは繫殖期の本気を見せつけるように次々とキングミノタウロスが湧いてくる。
カイザータウロスの能力か……。
奴は自由自在にキングミノタウロスを操作できる。
しかし、俺は攻撃のターゲットをカイザータウロスに絞っていた。
奴との戦いは長引けばこちらが必ず不利になるため、最短最速で終わらせる必要があったからだ。
「――――ダークスフィア――――」
「――――ダークスフィア――――」
スキル「二重詠唱」で俺は闇魔法を二連続で詠唱し、カイザータウロスの傍にいるキングミノタウロスを一網打尽していく。
これでアイツの周りは殆ど魔物が居なくなった。
余計なキングミノタウロスを排除し、カイザータウロスとの一騎打ちに集中しようとした瞬間、俺はゾクリと身震いをする。
「――――シールドロブ――――」
カイザータウロスが全身全霊の力で装備していた盾を投擲したからだ。
「――――エクスカリバー――――!」
ガキッッッ!!
剣と一直線に向かってきた盾が衝突した瞬間、俺は自身の選択を深く後悔した。
「ぐはっ……!?」
ありえない盾の威力に俺はダンジョンまでぶっ飛ばされたからだ。
不味い……!魔物が密集しているところに飛ばされたかっ……!
一気にHPが減った俺だが、すぐさま身体を起こし、ダンジョンからわらわらと湧いてくる周囲のキングミノタウロスを倒していく。
俺はキングミノタウロスは一撃で仕留めることができるがコイツらはA級の魔物だ。冷静に一体ずつ処理しなければ厄介なことになる。
先にキングミノタウロスを倒す作戦に変更した俺だが、不意に背後からカイザータウロスの盾攻撃が繰り出される。
「――――シールドバッシュ――――」
ゴキャッッッ!!
背中にモロにカイザータウロスの攻撃を受けた俺は近くの森まで大きく飛ばされ、倒れていた。
「ガハッ……!?」
クソがッ……!
背中が……やべェし、痛みで体が動かねェ……!
両足で立つなんてもってのほかだ。
だが……。
俺は過去にアルス村の繫殖期の依頼を裏切っている。
村人に嫌われているのもそれだけのことをやってしまったからだ。
そして……。
今、もう一度俺はここの村人たちの命を握っている状況だ。
今、「神獣の里」にいるアイツに迷惑をかけたくない。
だから……。
今度こそ……。
今度こそ、俺がこの村を守るっっ!
俺は決意を痛み止めにさせ、激痛を麻痺させる。
その結果、立ち上がることに成功していた。
「――――転移――――」
俺は再度ダンジョン近くに転移する。
「学習シナイナ……勇者ヨ」
呆れるカイザータウロスを無視し、俺はダンジョン内部に向かって魔法を放つ。
「――――ダークスフィア――――」
「――――ダークスフィア――――」
ドゴオオオンッッッ!!
「何ッ! 爆破ヲ付与するスキルを持ッテイタノカ!?」
俺はカイザータウロスを今度こそ両断するため、奴の周囲にいるキングミノタウロスを斬って斬って斬りまくっていく。
奴を倒すにはもう正面突破で道を力づくでこじ開けるしかない。
「――――ダークスフィア――――」
「――――ダークスフィア――――」
俺は魔法をあえてカイザータウロスの手前で爆発させ、周囲に爆煙を舞い散らせる。
互いに視界が遮られたが、奴の装備する盾の光から、こちらからは手に取るように居場所が分かる。
俺は剣スキルでとどめを入れる段階に到達するも、煙の中でカイザータウロスは俺に話しかける。
「残念ダガ、我はオートガードのスキルを発動スルコトガデキル」
そう告げると、カイザータウロスの盾は更に光り輝く。
「――――ゼッタイボウギョ――――」
剣聖の「絶対両断」が攻撃に特化したスキルだとすれば、こっちは防御に特化したスキルか……。
間合いに入る攻撃を全て自動的に盾で守るカイザータウロスのスキル。
恐らくアリシアがコイツに敗北したのはこのスキルを攻略出来なかったからだろう。
しかし、俺は相手の絶対を無効化するスキルを発動する。
「――――キャンセル――――!」
カイザータウロスは自身の盾の自動防御が切れたことに気づいたのか、すぐさま叫び声を上げる。
「オオオオオオオオ!! 勇者ヨ!? 何ヲシタッッ!?」
俺はすぐさまカイザータウロスの懐に入り、切り札を発動する。
「――――デススラッシュ――――!」
闇に飲まれた剣の攻撃に耐えられなかったのか、カイザータウロスは断末魔の叫びを上げる。
「グオオオオォォッッ!? オノレッ! 勇者アアアァッ!」
目の前にいる魔物の皇帝からは鮮血が舞い、盾と共に黒い塵になる。
そして……。
カイザータウロスは完璧に姿を消していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます