第43話 試練の塔にてラストゴーレムを討伐する

 俺達はエルト砂漠を更に進むと、神々しい白い石で出来た塔の前に到着する。


「ここが『試練の塔』か……」


「うむ。高すぎて頂上が見えぬな」


 俺は気を引き締めて、ネネと共に「試練の塔」内部に侵入するも、魔物の群れが視界に入る。


「頂上に向かうにはあの魔物を倒したほうが良さそうじゃの」


 ネネの言う通りだ。

 魔物の後方には上へと続く螺旋状の階段があるが、無理矢理戦闘を避け、上の階で挟まれでもしたらかなり厄介だ。


 正面にはA級のキングミノタウロスが複数体存在しており、俺はすぐさま魔法を詠唱する。


「――――ファイアーボール――――」


 槍スキル「乱撃」で俺の魔法は全体攻撃になっている。

 巨大な火の玉に直撃したキングミノタウロスは一瞬にして消し炭になっていた。


 俺達は螺旋階段を上り、2Fに辿り着くも、今度の敵も見たことのある魔物だった。


「ガーディアンナイトか……」


「主よ。あの魔物を知っておるのか?」


「ああ……。『試練のダンジョン』最深部にいた魔物だ」


 あの魔物はアリシアと戦った時に物凄く苦戦した思い出がある。


「ネネ。先に階段を真ん中ぐらいまで進んでもらえないかな? あの魔物の討伐は少し工夫しないと駄目なんだ」


「分かったぞ。我が主よ」


 ネネを先に階段に向かわせ、その間に俺は剣でガーディアンナイトの相手をする。

 彼女が階段を上ったことを確認すると、すぐさま俺も階段近くに移動し、遠距離から魔法を詠唱する。


「――――ファイアーボール――――!」


「――――ソードガード――――」


 ガーディアンナイトはスキルを発動するが、俺の魔法を打ち消すことができず、一気に燃え上がる。


 俺はあの時よりも、成長したんだ!


「ぐああああああああぁぁっっ!!」


 ガーディアンナイトは断末魔の悲鳴をあげるが、やはり想像通り床一面は黄色いオーラで包まれた。


 アリシア不在であの別空間への転移スキルを食らえば即詰みだ。

 俺は身体強化で加速し、上の階段を一気に上っていた。


 その後も俺とネネはS級の魔物を相手しながらも、何とか頂上の50Fに辿り着いていた。

 周囲は数本の柱が等間隔で立っており、天井も無いので、風が強く吹いている。


 そして、正面には全身が深紅の色に輝く一体のゴーレムが待ち構えていた。


 俺達が頂上に辿り着くや否や、ゴーレムは起動したのか、目は光り、動きを開始する。


「我は『大天使の翼』を守るラストゴーレム。この遺物を求めるなら、そなたらの力、証明して見せよ」


 「大天使の翼」か……。

 恐らく目の前のラストゴーレムを倒せば、魔天空城に行くことができるのだろう。


 俺は戦いを最速で終わらせるため、すぐさま魔法を詠唱する。


「――――ファイアーボール――――!」


 ラストゴーレムに俺の火球は直撃するも、ダメージが通った気配は全くない。


「ふむ。あるじの魔法が全く効かぬか。あの魔物のランクはS+といったところじゃの」


 聞いたことのないランクに一瞬焦りを感じたが、俺はすぐさま剣を抜く。

 大丈夫だ。魔法が効かないなら剣を使えばいい。

 両方に耐性があるわけではないはずだ!


 俺は剣にポイント・エージェンタを付与し、一気に距離を縮めて攻撃をお見舞いする。


 キンッッ!!


「嘘だろっ!? 無傷なのか!?」


 暗黒竜を両断した一撃はラストゴーレムに傷一つ付けることが出来なかった。


「我に物理攻撃は効かん! 防御力は9999ある!」


「何だと……!?」


 瞬間、両手を合わせ、巨大な拳になったラストゴーレムの一撃が振り下ろされる。


「うわっ……!!」


 俺は間一髪で避けるが、ネネの隕石魔法みたいな威力を持った攻撃に、血の気が引いていた。

 俺はラストゴーレムから距離を取り、ネネの元まで退くと、彼女は一つの考えを口にする。


「うむ。どうやらあの魔物はあるじとの相性があまり良くなさそうじゃな」


「そう……かもしれないね」


 ネネの言う通りだ。

 物理攻撃が効かない上に「ファイアーボール」もノーダメージときた。

 金属タイプのゴーレムなら、ダメージが通ったかもしれないが、どうやら土でできたタイプのゴーレムらしい。


「じゃが、わらわの水魔法なら何とか仕留められるかもしれぬな」


「本当! 流石ネネだ!」


「じゃが、発動までに時間をかなり必要とする。詠唱までの間、あるじに時間稼ぎをしてもらいたいのじゃ」


「ああ、分かったよ!」


 俺はラストゴーレムと戦うため、再度剣を構えるも、目の前の敵からは強烈なオーラが放たれる。


「獣人の切り札を我が黙って見過ごすと思ったか?」


 そう言って、ラストゴーレムは床を渾身の力でぶん殴る。


「――――ギガクエイク――――!」


 瞬間、ビキビキビキッッ!っと地面にひびが入り、下のフロアに落とされそうになる。


 不味い……。

 彼女の集中力を削っては駄目だ。


「――――ポイント・エージェンタ――――!」


 俺は床に手をつき、割れた地面に経験値を付与することで、元の状態に戻すことに成功していた。


 咄嗟の判断で荒療治だった気もするが、何とかなりそうか?


「中々やるな、少年! ではこれではどうだ?」


 目の前のラストゴーレムはその場で動きを完全に停止し、俺は眉をひそめる。


 何をやっているんだ?

 俺は首を傾げそうになったが、一瞬にして顔を青ざめさせる。

 いや、あれは……次の攻撃に備えて力を貯めているのか!!


 俺はもう一度床に手をついて、ありったけの経験値を付与する。

 俺がラストゴーレムを止める手段が無い以上、次の攻撃に備えることしか出来ないからだ。


「――――ギガクエイク――――!」


 力を貯め終えたラストゴーレムが再度床を強打し、俺は歯を食いしばる。

 あまりにも強烈な一撃に、ポイント・エージェンタでも威力を完全に殺すことが困難だからだ。


「ぐっ……。さっきの攻撃とは桁外れの威力だ……!! だけど、俺はこんなところで負けられないんだ!!」


 俺は全身全霊でユニークスキルを使用し続けた結果、ラストゴーレムのスキルを相殺することに成功していた。


 その瞬間、俺の背後からネネの魔法を放つ声が「試練の塔」に響き渡る。


「――――ハイドロハリケーン――――!」


 有り得ない程強力な水の渦がラストゴーレムを拘束すると、彼は叫び声をあげる。


「グアアアアアアアアァァッッ!!!」


「凄いッ、あのラストゴーレムをたった一撃で! 凄いよ、ネネ!」


 しかし、最強の魔物を倒したことで安心するのも束の間。

 俺は物凄い水量に違和感を感じていた。


「あるすぅー。調子に乗って魔法の威力を間違えたにゃ……」


 神獣石の効果が遂に切れてしまったのか、小さい姿に戻っていたネネは申し訳なさそうに呟く。


「いや……水の流れがとんでもないことになってるんだけど!?」


 ザパアァァァン!と勢いづいた水に襲われ、俺とネネは流される。


「げほごほがばっ……! し、死ぬ……」


「ニャーッ!!??」


 意識が途切れそうな中、俺とネネは柱の間を縫うようにして水流に体を任せ、地上へと流されていった。

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