第42話 聖女メイの行方

 最後の四天王であるネクロマンサーを討つと、俺達を囲んでいた魔物は一斉に消え始めた。


「兄上……。オレ達はやりました。仇はとりましたよ」


「ダインさん……」


 俺の傍にいたダインは空に向かって思いを告げる。


「オレはまだ兄上に敵いませんが、必ず追いついて見せます!」


 彼が決意を新たにしていると、味方の騎士達がこちらに駆けつけてくる。


「ダイン副騎士団長! ご無事でしたか!」


 辺りを見回すと、他の魔王軍は殆ど居なくなっていた。

 どうやら騎士達が猛威を振るって敵を殲滅したらしい。


「ああ! オレ達は勝ったぞ!」


 ダインは両手を広げキラリと笑顔を浮かべる。


「アルスくん、本当にありがとう! 王都を魔王軍から守っただけでなく、兄上の無念も晴らすことが出来た!」


「いえ……協力してくれた皆さんのおかげです。俺一人で掴めた勝利ではありません」


 今回は本当に命を落としてもおかしくない戦いだったが、最後まで生き残れたのは周りに助けられたからだ。

 特に神獣石を扱うネネが居なければそこで終わって場面が何度もあった。

 彼女だけじゃない。

 副騎士団長のダインも兄からは実力不足と言われていたが、彼はネクロマンサーとの戦いで何百もの魔物を倒していた。


「うむ! 流石、兄上が認めた英雄だ! オレも早くキミに追いつきたいぞ! それより、アルスくん、今から向かう国王への報告。ついてこないかい?」


「え、ええ……。そうですね……」


 俺達は何とか最後の四天王を倒したが、操られている国王の件はまだ解決していない。

 恐らく今戻っても、再度牢屋に閉じ込められるだけだろう。

 だから、聖女メイに会う必要があるのだ。


 その説明をしようとした瞬間、さっきから神獣石を黙って見つめていたネネが焦り顔を浮かべる。


「た、大変じゃ! メイが魔天空城に連れ去られたぞ!」


 ネネの発言に俺は落ち着きを無くし、彼女にすぐさま問い詰める。


「ど、どういうこと!?」


「呪いを解除するのにメイが必要なのは覚えておるじゃろ? 今しがた神獣石で彼女の居場所を探してみたところ、あそこに反応があったのじゃ!」


 ネネは空中に浮かんでいる城を指さす。

 そんな……。よりにもよって何故彼女が?

 もしかして操られた国王に関係しているのか?


 そうと決まれば俺達の次の行動は決まった。今すぐあの魔天空城に彼女を助けに向かうべきだ。だけど、どうやってあそこに行けば良いんだ?


「うむ。アルスくん達はあの謎の城に行きたいのかな?」


「はい、そうなんです! 何か手段はありませんかね?」


「魔導船はどうだろう? オレが頼めば直ぐに手配できるかもしれないぞ!」


 魔導船か……。

 ダインの提案はありがたいが、俺は難しい顔をしていた。

 何故なら魔導船を使用した場合、恐らく俺達は格好の的になるからだ。

 城を守っているブラックガーゴイルに攻撃され、墜落するのは目に見えて想像できる。


「魔導船……以外はありませんかね……?」


「うーーむ。ネネくんの魔法ではあそこに行くのは難しいのだろうか?」


「おいおい! ダインよ。悪いが、わらわにも出来ることと出来ないことがあるぞ。あそこまで行く手段は生憎と持ち合わせておらん!」


「そ、そんな……」


 俺は情けない声を漏らしていたが、ダインは手をぽんと叩く。


「断定はできないが、一つだけ可能性があるぞ!」


「本当ですか!」


「ああ! 元々ここにいた魔王軍は更に東に進んだ『試練の塔』を制圧していたんだ。もしかしたら、そこに何か手掛かりがあるのかもしれない!」


 「試練の塔」か……。

 俺は「神獣の里」に行った際、「試練のダンジョン」に挑戦し、神獣石を入手した。

 確かに、今はダインのその提案に賭けるしかなさそうだな。


「ネネ。今から俺一人で『試練の塔』に行ってくるよ」


「何を言っておる! わらわはまだ、戦えるぞ! それに……メイは大切な親友じゃしな」


 ネネは先程の魔王軍との戦いで神獣石を扱う体力をかなり消耗している。

 にもかかわらず、「試練の塔」についてくるらしい。

 なら、俺がどうしないといけないかは既に決まっていた。


「分かった。だけど、無理はさせないよう俺が頑張るよ」


「うむ! ではここで一旦お別れかなアルスくん、ネネくん。オレ達は一度引き換えすがくれぐれも気を付けてくれよ。それと、アルスくん。キミには渡すものがあるから、またオレに会いに来てくれ!」


 俺とネネは「試練の塔」に向かうため騎士団と別れ、エルト砂漠を更に東に進んだ。

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