パワハラ勇者の経験値を全て稼いでいた《ポイント・エージェンタ》は追放されてしまう~俺が居ないとレベル1になるけど本当に大丈夫?スキルが覚醒して経験値【1億倍】なのでS級魔法もスキルも取り放題~
第44話 アリシアと合流し、遂に魔天空城に辿り着く
第44話 アリシアと合流し、遂に魔天空城に辿り着く
全身を水浸しになっていた俺とネネは何とか地上に戻ることが出来ていた。
が、ネネは仰向けに倒れており、両目をバッテンにしている。
ネネは本当によく頑張った。
彼女がいないと「試練の塔」はおろか、王都だって守り切れなかったはずだからだ。
魔天空城の同行は絶対に不可能だから、俺が頑張らないとな……。
砂漠に座っていた俺は静かに決意を固めていると、背後から聞き慣れた彼女の声が聞こえてくる。
「交代……ですか?」
身をかがめたアリシアが俺に向かってニコリと笑みを浮かべる。
「アリシア! 町のほうは大丈夫!?」
「ええ、アルス様。ブラックガーゴイルの進撃は止みました。現在王都では結界を張り直しています」
「良かった! それを聞けて安心したよ!」
「それで、アルス様の状況はどうでしたか?」
彼女の質問をきっかけに、俺は魔王軍最後の四天王を討ったこと、魔天空城にいる聖女を救出するため、「試練の塔」に挑戦していたことを説明した。
「では、今からあの浮いた城に行くことが可能ということですか?」
「ああ。多分、この翼があればあそこまで飛べると思う」
俺は傍に落ちていた「大天使の翼」の片翼を拾った瞬間、背中に翼が生えてくると同時に、脳内に飛行方法の概念が流れてきた。
この調子でいけば、城に辿り着くまであまり時間がかからないだろう。
アリシアも翼を装備できるようになると、何故か彼女はクスリと笑う。
「似合い……ますかね?」
その場で一回転するアリシア。
「ああ。天使みたいだね」
翼の生えたアリシアに対して率直な感想を口に出すと、彼女は俺に背を向け、ヨッシャ!ヨッシャ!と声を上げ、ガッツポーズしているように見えたが、あまり触れないようにする。
「と、とにかく……これで、魔天空城に行けそうだね!」
「にゃぁ! ネネは街でみんにゃの帰りを待っているニャ。あるすぅ、絶対メイを助けて欲しいニャ!」
「ああ、約束する。必ず連れて帰ってくるよ!」
「アルス様。では、行きますか?」
「ああ、行こう。アリシア」
「はい!」
アリシアが勢い良く返事すると同時に、俺と彼女は魔天空城に向かっていた。
☆
飛行を続けること数十分。
俺達は視界に魔天空城を捉えていた。
「ガギャッ!? ギギャギャギャギャ!!」
しかし、城には見張り役がいるのか、ブラックガーゴイルの群れは俺達目掛けて襲い掛かってくる。
「アリシア! 戦える?」
「はい! 平気です!」
俺とアリシアはすぐさま剣を抜いて、魔物の群れを倒していく。
「ヨシッ! これで何とか無事辿り着けそうだね!」
俺はしばらく彼女の返事を待っていたが、何も返ってこなかったので、辺りを見渡す。
「あれ? アリシ……」
「アルス様あああぁぁっっ!?」
「え、ちょっ……! アリシア!?」
急降下していく彼女の元へ俺は一気に飛んで行く。
「大天使の翼」は意外と脆いのか……!
俺は両腕でアリシアを抱きかかえるも、彼女はぐへへと笑みを浮かべていたので、あまり直視しないようにする。
「ね、ねえ、アリシア。『絶対両断』のスキルがあるから翼は攻撃されないと思うんだけど……」
彼女の「絶対両断」は半径数メートル程度ならあらゆるものを自動で切り伏せることができる。どう考えてもブラックガーゴイルの槍で攻撃されるとは思えないのだ。
「ア、アルス様は私が『大天使の翼』をむしる暴挙に出ていたとお考えなのですか?」
「いや……。誰もそんなこと言ってないよ……。っていうか流石に冗談だよね?」
「…………はい」
アリシアのおっかない発言が気になったが、彼女は何とも言えない表情を浮かべていたので、俺はそれ以上問い詰めないことにする。
そんなやり取りをしつつ、俺とアリシアは遂に魔天空城の入り口に到着していた。
「はぁ。何とか辿り着いた……」
彼女をゆっくり降ろし、俺は彼女に『大天使の翼』を渡す。
「アルス様……。これは?」
「これはアリシアが持っておいてよ。俺は万が一ここから地上に落ちても身体強化のスキルで何とか生き延びることができるから」
「分かりました……」
彼女がそう呟くと同時に城の扉が開き、大量の魔物が溢れ出てくる。
侵入者である俺達を排除するためだろうが、流石に多いな……。
空中戦から休む間を与えることなく、再度ブラックガーゴイルの群れが襲ってきたのだ。
俺は襲い掛かってくる魔物を槍スキル「乱撃」と併用し、ファイアーボールで一掃していく。
ぐっ……。城の中はこれ以上に多いのか?
大きく時間を取られるも、ようやく敵を殲滅したところで、俺は「千里眼」のスキルを用いて城の内部を観察する。
やっぱり多い……。
これを全て倒すとなると、俺とアリシアだけでなく、ネネもいないと厳しいな……。
城内で何が起こるか分からない以上、出来れば必要以上に疲れを残したくない。
レベルアップによりHPとMPは全回復するが、集中力や精神面の全てが回復するわけではないからだ。
それに、目的はメイの救出だ。魔物の全滅ではない。
彼女を探すため「千里眼」で城内を観察していると、俺はある人物の存在に気づき、声を漏らす。
「レオンッ!? 何故彼がここに!?」
「神獣の里」で四天王を倒したことになっている彼の存在に、俺は驚き顔を浮かべる。呪いの件に関してレオンが無関係とは思えないが、聖女であるメイとも何か関係があるのか?そもそも彼は俺達の味方なのか?
そんな疑問を考えていると、傍にいたアリシアが俺以上にレオンについて反応を示す。
「なっ……、アルス様!! あのゴミ勇者がここにいるのですか!?」
「あ、ああ……。何故か本丸にいるんだ」
城の玉座に座っているが、様子がおかしい。
何故か隻眼で左腕の存在が見えないからだ。
「アイツはこの私が……!」
「ちょっ、ちょっと待ってよアリシア!」
二人の間に何か因縁があるのか分からないが、アリシアは一瞬にしてこの場から消えてしまっていた。
「行ってしまったよ……」
剣聖である以上、彼女に万が一は無いと思うが……。
勝手に行動したアリシアに溜息を吐きたくなったが、とはいえ、彼女が城内を攪乱してくれたおかげで、混乱に乗じてメイを救出しやすくなった。
「アリシアと合流するのはメイを助けてからにするか……」
遂にメイの居場所を特定した俺は彼女の位置する二の丸へ、一人で足を運んでいた。
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