第39話 最後の四天王、ネクロマンサーとの決着

 死神を一撃で切り伏せた俺はネクロマンサーに向かって駆け出そうとした瞬間、後方からネネの魔法が放たれる。


「――――ライジングサンダー――――!」


 バリバリバリバリッッ!!とネネの唱えた強烈な電撃がネクロマンサー目掛けて一直線に走る。


 賢者ネネの強力な魔法だ。致命的なダメージは避けられないはずだ。

 しかし、目の前のネクロマンサーは雷撃を完璧に直撃するも、ダメージが通るどころか、無傷状態だった。


「何が起こっておる! わらわの魔法が効かぬじゃと!」


「ふぇふぇふぇ。獣人風情の魔法が効くわけないじゃろ」


 ネクロマンサーは次々と魔物の召喚を行い、いつの間にか俺達は魔物に囲まれていた。


「ネネ! ダインさん! 魔物の相手をお願いします。あいつは俺が倒します!」


「うむ。あやつは主に頼むぞ」


「周りはオレとネネくんに任せてくれ!」


 俺は魔物を払いのけ、身体強化で一気にネクロマンサーに近づく。


 そして俺は即座に剣を振り下ろすも、違和感を感じていた。


「硬いッ……!?」


 ネネの魔法が全く効かない時点で、俺の魔法も意味をなさないことが分かったが、剣でもダメージが通らないだと……!?


 一体何がどうなっているんだ!?


「ワシの装備する『不死のローブ』は表面に耐魔の効果が付与されておる。剣が効かないのは何故か分かるかのぉ?」


「まさか! ローブ内部は物理耐性の効果が付与されているのか!?」


「正解じゃ。そうと分かれば、ワシを倒すのは諦めることじゃな」


「諦めるわけないだろっ!」


 まだ、負けが決まったわけじゃない……!!


 俺は休むことなく一心不乱でネクロマンサーを斬り続ける。


 しかし、どれだけ攻撃しても、ネクロマンサーにダメージが通っている感触が得られない。


 それに、ふと辺りを見渡すと、俺達は大量の魔物に囲まれていた。


 ネクロマンサーは「高速召喚」のスキルを取得しているのか、有り得ない速さで次々と魔物を呼び出す。それも、全てがS級の魔物だ。


 俺はスキル「乱撃」を用いることでネクロマンサー攻撃時に、周囲の魔物にもダメージは通るが、相手の召喚スピードは俺の攻撃速度を圧倒的に凌駕していた。


「我が主よ……。それで……あやつは倒せそうかの?」


 ネネの質問に俺は頭が真っ白になっていた。


 彼女の声が耳には入ってはくるが、頭で処理できないのだ。


 ネネは疲れを表情に出していないが、恐らく神獣石の効果にかなり限界が来ている。それに、今も魔物と戦っているダインさんも、さっきまで瀕死状態だったのだ。


 これ以上戦いを長引かせられない……。


 にもかかわらず、ネクロマンサーに有効な攻撃ができない俺はネネに返事ができないでいた。


「――――ライジングサンダー――――!」


 再度彼女が魔法を詠唱し、俺の傍にいた魔物を瞬殺する。


 いや……。一つだけ、あいつを倒せる方法があるかもしれないな……。

 彼女の魔法をきっかけに、ふとある考えがよぎった俺はネクロマンサーの装備している「不死のローブ」を注視する。


 彼にダメージは全く通っていないが、俺の剣での攻撃を受け続けたお陰で、ローブはかなりボロボロになっていたのだ。


「ねえ、ネネ! 俺の剣にその雷魔法を付与することってできるかな?」


「うむ。やってみないと分からぬが、あるじが言うなら試す価値はありそうじゃな!」


 そう言って、ネネは俺の剣に魔法を詠唱する。


 瞬間、俺の剣の刀身はバチバチバチッと彼女の雷魔法が走る。


「ふぇふぇふぇ。そんなオモチャでワシを討てるとでも?」


「いいや! お前はこれで終わりだっ!」


 俺は身体強化で一気にネクロマンサーとの距離を縮め、全身全霊で剣スキルを発動する。


「――――流星――――!!」


 初撃で傷ついたローブの箇所に深手を与え、二撃、三撃と全く同じ個所に剣で集中攻撃する。


「ぐっっ……!! こやつっ!! 力ずくで弱点を作ってきよったわ!!」


 九撃と十撃目にはとうとうダメージはピークに到達し、ネクロマンサーの全身に電撃が走っていた。


「おのれっ!! こんなところでワシが負けるわけには……負けるわけにはいかんのじゃあああぁぁぁっっ!!!」


 断末魔の叫びをあげた後、ネクロマンサーは最後に言い残したことがあるのか、その場で呟く。


「魔王メリッサ様……。後は任せましたぞ。貴方こそ、この世界の王に相応しいお方……」


 ネクロマンサーはそう言い残し、黒い煙となって絶命した。

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