第36話 最強の暗黒騎士の一撃を食い止める

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 エルト砂漠の戦場に立った俺は目の前の魔族をひたすら倒していく。

 槍スキル「乱撃」を獲得したことで、斧を振れば全体に攻撃が届き、魔法を放てば周囲が炎で包まれる。

 空中戦を得意としている【ドラゴンナイト】は弓で一掃していった。


「オイ、あらゆる武器を使いこなす奴が出たぞ!」

「四天王を二人も倒した奴だ! 殺せ!」

「ぐはっっ……!? 実力は報告以上かッ!?」


「良いぞっ! アルスくん! この調子だと勝てるぞ!」


 ダインはこちらに向かってガッツポーズをする。

 戦況は随分と良くなっていた。


「ネネ。さっきの魔法でかなり神獣石の力を消耗したから、休んでても大丈夫だよ」


「オイオイ我が主よ。わらわをあまり甘く見るでないぞ。この程度ならまだ戦えるわ」


 杞憂だったのか、ネネはまだ戦闘に参加できるらしい。

 神獣石を扱える彼女の存在に、ポイント・エージェンタで格段に強くなった味方の騎士団。

 戦況は立て直しつつあるが、やはり数が数なので、最後まで油断はできない。


 斧の耐久力が無くなったところで、「ウェポンボックス」を用いて武器を交換しようとするも、不意に砂漠を真っ二つに割るような斬撃が俺に向かって飛んでくる。


 危ないッ……!

 俺は咄嗟に飛び込んで回避に成功したが、あと少し反応が遅れていれば、確実に斬られていただろう。


「フッ。よくぞ今の一太刀を躱したな、少年」


 全身を漆黒の鎧に身を包んだ騎士が俺達の前に現れ、ダインは兄上……と呟く。

 どうやらあれが暗黒騎士であり、ダインの兄でもある騎士団長か。

 漂うオーラから実力は間違いなく四天王クラスだろう。


 俺は暗黒騎士の様子を伺っていると、傍にいたネネが驚きの声を漏らす。


「あの鎧……。まさか……!」


「ネネ、あの鎧を知っているの?」


「呪いの防具『破滅の鎧』じゃ。力と引き換えに一度あれを装備すれば、二度と外すことができぬ」


 そんな……。

 ならもうダインは二度と兄の顔を見ることが出来ないというわけか……。

 ネネの発言を最後に、ダインは暗黒騎士に向かって一気に駆け出す。


「兄上ッ!!」


「ちょっ…ダインさん!?」


 暗黒騎士の元へ向かうダイン副騎士団長に戸惑っていると、騎士団の一人が彼に向かって大きく叫ぶ。


「ダイン副騎士団長! 暗黒騎士はアルス君に任せましょう!」


 ダインはその場で一度立ち止まりこちらに振り返るも、彼は騎士の意見を拒む。


「駄目だ! 兄上はオレに任せて欲しい!」


「で、ですがッ……!」


「大丈夫だ! アルスくんの能力のおかげで今度こそ兄上の目を覚ますことが出来ると思うんだ!」


 俺達にそう訴えかけるダイン。

 兄を止めたいという彼の意志はここにいる誰もが否定することができなかった。


 副騎士団長に納得した味方の騎士はそれ以上何も言わなくなり、俺はダインに口を開ける。


「分かりました。出来る限り見届けますが、危なくなったら直ぐに退いてください」


「ありがとう。アルスくん」


 一騎打ちをするためようやく暗黒騎士の元へ辿り着くダイン。

 ダインが剣を抜くと、暗黒騎士も剣先を彼に向ける。


「また貴様か……。何故、我に挑む?」


「兄上を魔王軍の手から解放するためですっ!」


 暗黒騎士との距離を縮めたダインは次々と攻撃を加える。


 カキィィィィィン!カキン!カキン!カキン!


「いける! さっきより全然戦えているぞ!」


 騎士の一人は歓声を上げるが、俺は黙っていた。

 暗黒騎士はダインの攻撃全てを受け止めているからだ。

 彼が本気を出しているのか定かでないので、実力の底が見えないのだ。


 そして、嫌な予感が的中したのか、先程とは打って変わって、暗黒騎士がダインを押し始める。


「不味いの! わらわには暗黒騎士とダインに実力差が生まれているように見えるぞ!」


 ダインさん……。頑張って下さい!

 俺は拳を握りながら副騎士団長を応援していると、ダインの剣が物凄い白い光で満ちる。


「あ、あれは……!」


 恐らく魔族に対して高威力の効果を発揮する能力だろう。

 彼の剣を見た瞬間、騎士は大声で叫ぶ。


「あのスキル! ダイン副騎士団長の切り札だ!」


 ダインさんはこの一撃に全てをかけたってことか!

 それに……あのスキルはかなりの威力が期待できそうだ。


「――――ホーリーブレード――――!」


 ダインが剣を振り下ろした瞬間、彼らを中心に大きく砂煙が舞う。

 いくら暗黒騎士でも、あの一撃をやり過ごすことは不可能だろう。

 彼らの決着を固唾を飲んで見守る俺達。

 しかし、砂煙が消え、二人の様子が確認できた瞬間、俺は言葉を失っていた。

 衝撃的な光景が視界に入ったからだ。


「ぐはっ……」


 副騎士団長は肩から腰へ斜めに出血しており、暗黒騎士は彼の一撃をものともしていない。

 その場に膝をつくダインに暗黒騎士は心底侮蔑するように吐き捨てる。


「理解に苦しむ。どうしてその程度の実力で我の前に立った」


「兄……上。どう……か。目を覚ましてください……」


「愚か者が」


 暗黒騎士はダインさんにとどめの一撃を加えるため、剣を振り下ろす。


「止めろッ!!」


 俺はそれを止めようと一気に駆け出すが、暗黒騎士の剣の速さに追いつけない。


 ダメだッ……!間に合わないッッ!!


「――――ポジション・コンバート――――!」


 俺の背後で呪文を詠唱したネネ。

 その瞬間、俺とダイン副騎士団長の位置は完全に入れ替わっていた。

 俺はすぐさま剣を抜き、暗黒騎士に向かって剣を大きく振る。


「うおおおおおお!!」


「なにッ!?」


 俺は全身全霊で暗黒騎士に挑んだ結果、彼の一撃を食い止めることに成功していた。

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