第25話 魔王軍四天王のベルゼブブに勝利する
ここが戦場……!?今からあの中に入って戦うのか!?
ネネの救援に駆け付けた俺だが、物凄い数の魔王軍に圧倒されていた。
味方の何倍、何十倍、何百倍もの魔族から、空気が重く、息をするのが苦しい。
いや、怖気づいちゃダメだ。彼女を助けて、この里を救うんだ。
俺は気合を入れて戦場に足を踏み入れるも、前方で巨大な魔物が獣人たちを蹂躙している光景が目に入る。
恐らく魔王軍の【闇召喚士】が呼び出したオーガだろう。
俺は魔族を切り伏せ、巨人の元へ駆け出していくと、遠くのほうから【闇召喚士】の命令が聞こえてくる。
「ネネの元へ向かうネズミがおるぞ!」
ターゲットを変更したのか、くるりと回転したオーガは俺に向かってドタドタと地面を揺らしながら襲い掛かってくる。
「ウガアァァァッッ!」
俺は剣先を突撃してくる巨人に向け、身体強化を使用する。
オーガの大剣が振り下ろされ、俺は全身全霊の一撃を加えた瞬間、物凄い勢いで巨体は宙を舞っていた。
「ガアッッ……!?」
オーガが落下すると同時に物凄い地響きが起こり、魔族たちは次々と悲鳴をあげる。
「オイ、アイツ化物か!? キングオーガをぶっ飛ばしやがったぞ!」
「人間ごときの体格であの巨躯の一撃を押し返しただと!?」
「どうなっている!? 今すぐベルゼブブ様を呼べっ!」
俺は更に進撃を続け、一心不乱で魔族を倒して行くと、聞きなれた声が俺の元へ届く。
「アルス様!」
アリシアだ。
良かった。戦場はかなり絶望的な状態だけど、彼女はまだまだ戦える様子をしている。
アリシアは俺がどれだけ言っても無理をする性格なので、実はかなり心配していたのだ。
もしかしたら直前のポイント・エージェンタがかなり効いていたのかもしれない。
「アリシア! 無事かい!」
「お心遣いありがとうございます! 私は平気です!」
「そうか。それを聞いて安心したよ。それにしても酷い状況だね……」
「ええ。全ての元凶はゴミ勇者にあります。それよりアルス様。私はここの者達にお願いされてネネという獣人の救援に向かっているのですが、アルス様も同じでしょうか?」
「そうだったのか! なら、話は早い! 一緒に彼女の救出に向かおう! さっき一瞬だけ、彼女が放ったと思われる火柱の魔法が見えたんだ」
俺と彼女は一緒にネネの元へ向かおうとするも、不意に上空から魔弾が降りかかる。
「ぐっ……。な、何だ!?」
俺は空に注意を向けると、鉄の乗り物に乗った魔族が姿を現していた。
「オイオイ、マジじゃねェか! 獣くせぇところに人間が混じってやがる!」
「何だお前は!」
「アア? オメェも知らねぇのか、魔王軍四天王の一人、ベルゼブブ様をよォ!」
魔王軍の四天王だと……!?
まさか、そんな奴がこの里を襲ってきていたのか!
一刻も早くここから離れたいが、何故かベルゼブブと名乗る魔族は銃口の狙いを完全に俺に向けている。
四天王と名乗るだけあって、ベルゼブブからは強烈なオーラが醸しだされている。かなり強そうだ。
「アリシア! ここは俺に任せてネネの救出をお願いしてもいいかな?」
「はい、アルス様! ご武運を!」
この場から消えるアリシアにベルゼブブは気色の悪い笑みを浮かべる。
「ギャハハ! キングオーガをぶっ飛ばした奴はお前だな? なかなか良い女連れまわしてるじゃねぇか! 男を殺るのは楽しくねぇからサッサと終わらせるぞ。と言っても剣を装備しているお前に俺を倒す術は無いがな!」
空を駆け回るベルゼブブが再度こちらに魔弾を放とうした瞬間、俺は彼を撃ち落とすため、「ウェポンボックス」から弓を取り出してすぐさま引いた。
しかし、放たれた矢はベルゼブブに直撃するギリギリのところで避けられる。
「……ッぶねェ!? コイツ、いきなり弓を使いやがった!」
ベルゼブブがよろめいた瞬間、俺は足に身体強化をかける。
この隙を利用しないとベルゼブブは倒せない。
中距離攻撃を得意とする【魔銃士】は俺が近づく前にとどめを刺すことが可能だからだ。
俺はベルゼブブ目掛けて一気に跳躍し、剣を振り下ろして一撃を加える。
「ハ?」
ジャキィィィィィン!
俺が着地すると同時にベルゼブブはヒュルルルと墜落し、彼の配下は悲鳴をあげていた。
「ベ、ベルゼブブ様ァァッッ!?」
焦りを見せた配下たちだったが、ベルゼブブは鉄の乗り物無しにこちらに飛んでくる。
どうやら彼には対象を飛行化させる能力があるらしい。
空の上では余裕の表情を浮かべていたベルゼブブだったが、先程とは打って変わって俺に激昂する。
「糞がッッ! 俺のお気に入りを壊しやがって! テメェの脳みそ覗くまで絶対に逃がさねェ!!」
地面に降りたベルゼブブは二丁の拳銃を俺に向け、目にも留まらぬ速さで魔弾をとばす。
「――――デスバレット――――!」
黒い魔弾っ……!?
当たると絶対にヤバイっ!
放たれた弾丸はどう見ても即死の能力が付与されているとしか思えないオーラを纏っているからだ。
「オラオラオラッ! サッサと死にやがれっ!!」
「ぐっ……!!」
俺はベルゼブブの攻撃をただ躱し続けることしか出来ない。
近づくことはおろか、弓や魔法といった間接攻撃で反撃する隙もないのだ。
ネネの救出に向かえないことに焦りを感じていると、ベルゼブブの片方の拳銃から禍々しいオーラが発せられる。片方の銃口にエネルギーが満たされていたからだ。
「ギャハハッ! 俺の奥義【カタストロフィ】はこの辺り一帯を全て消し炭にする。誰を怒らせたのか分からせてやるよ!」
不味いっ!
一丁の拳銃でさえ、ベルゼブブに反撃できないのに、あいつの動きを止めないといけないのか……!?
奥義を放つ準備が出来たのか、ベルゼブブは大声で叫び、片方の銃口を俺の頭に向ける。
「食らえッ!! カタストロ……」
「させるかっ!」
俺は即座に「ウェポンボックス」から槍を取り出し、前に進むのではなく、ジャンプして後退した。
「デスバレット」が直撃するよりも前に、俺は身体強化でキリキリキリと腕に渾身の力を込める。
すぐさま全力で投擲した瞬間、豪速で一直線に飛んだ槍はベルゼブブが【カタストロフィ】を放つよりも前に、彼の心臓を貫いていた。
「ぐあああああああああああああぁぁぁっっっ!!??」
「うっ、嘘だろ!? こんなところでベルゼブブ様が負けるだとっ!」
「ベルゼブブ様ッ!! どうかご返事を!」
「オイ! 今すぐあのお方を呼べ! このままだと俺達魔王軍が負ける!」
絶命したベルゼブブは黒い煙となりこの場から消えると、上空にいた魔族の群れは速やかに撤退する。
俺はアリシアの後を追う形でネネの救援に急いで向かっていた。
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