第24話 【SIDE???】死闘
「な、何て包囲だ……!?」
「ここからの脱出は不可能なんじゃないのか!?」
「せめてネネ様だけでも脱出させるのだ!」
仲間が叫ぶ中、獣石の力を用いたネネは休むことなく魔法を詠唱し続けていた。
「――――サンダーボルト――――」
巨大な電撃は魔族に直撃し、次々と断末魔の叫びをあげて絶命する。
「ぐああああぁぁっっ!」
「ネネ様! もうおやめください!」
「そうです! 私達が命を捨てて道を作ります!」
「お願いします! 今すぐここから離脱してください!」
魔王軍と戦う獣人たちはネネに訴えかけるも、彼女は有無を言わさず否定する。
「誰じゃ、今退けとぬかしたものは? このわらわに対して無礼であろうが!」
獣石を用いた今の彼女は髪と耳が大きく伸び、背丈も今までより高くなっている。
「そ、そんなっ……!?」
兵の願いを無視したネネは続けざまに魔法を詠唱する。
「――――アイシクルランス――――」
今度は広範囲に渡って氷の槍が降りかかり、多くの魔族に攻撃が命中していく。
「っぐあああああああっっ!?」
一瞬にして敵を殲滅したことで獣人達は歓声をあげるも、一人除いてネネだけは空を睨んでいた。強烈な殺気を感じたからだ。
「ネネ様ッ! 大変です! 空から物凄い数の魔族が急接近しています!」
「分かっておるっ!!」
こやつらはまだ気づいとらんがあの群れ、異常に強いオーラが醸し出されておるな……。
わらわもそろそろ覚悟を決める時が来たか……。
ネネは一度大きく息を吸い、周りの獣人たちに声をあげる。
「お主らにわらわから命令がある! 耳の穴をかっぽじって聞くが良い!」
彼女の指示を聞くため、辺りの戦士達は静まり返る。
「久しぶりにこの里に帰ってきたが、存外お主らは弱い。とんだ期待外れじゃった。穀潰しに木偶の坊。獣石を扱えぬ才能無し。生きていて恥ずかしくないのかと疑問に思うほどじゃ」
「な……!? ネネ様何を……」
「お主らに頼っていては命がいくつあっても足りんのじゃ。あやつらの狙いは獣石を扱うこのわらわにある。今すぐわらわを置いてここから出ていくが良い。道くらいは作ってやろう」
すぐさま獣人たちはネネの指示に従い、撤退するかと思いきや、彼らは彼女に猛反発する。
「そんなこと言われて、ネネ様を置いて行くわけがないでしょうが!」
「そうです! 最後までネネ様と共に戦います!」
「ネネ様と戦えるならここで死んでも悔いはありません!」
「……ッ! お主ら! このわらわの言うことが聞けぬというのか?」
魔王軍の包囲から抜け出せない状況にもかかわらず、戦場で戦うことを決めた獣人兵達。
ネネの目の前にいた獣人は強く拳を握ったからか、血がポタポタと落ちていた。
「ふん、勝手にするが良い!」
ネネがそう告げた瞬間、空から次々と弾丸が飛んでくる。
魔力で弾丸を生成する【魔銃士】の群れだ。
「――――マジックバリア――――」
ネネはすかさず魔法を詠唱し、味方全体を薄いドーム状の膜で覆う。
マジックバリアは魔法攻撃を防ぐ能力がある。
上空から魔族が放った魔弾は何百と降り注いできたが、全てをこの魔法で防いでいた。
空にいる【魔銃士】はネネの存在に気づいたのか、二丁の拳銃を装備し、鉄の塊に乗った一人の魔族がこちらに急接近してくる。
「ギャハハ! オマエが獣石を扱うネネだな! 魔王様から始末しろと言われてるゼェ!」
「何だお主は? 生憎、下卑た輩と話す口を持ち合わせていないのでな」
「アー? 何だ、俺を知らねぇのか? 魔王軍四天王の一人、ベルゼブブ様をよォ!」
「ッ……四天王!?」
確かに、こやつからは強烈に負のオーラが出されておる。
まさか、向こうから大将が出てくるとは……。
「お前達は俺の魔弾でハチの巣にしてやるからよぉ、精一杯抵抗してくれよ。そっちのほうが楽しいからな。ギャハハ!」
「クズめ……。わらわに銃口を向けた罪。今すぐ死んで詫びよ!」
ネネは最大火力の魔法をベルゼブブに向けて詠唱する。
「――――メギドフレイム――――!」
空にまで届く火の柱がベルゼブブを焼き尽くし、彼の配下は悲鳴をあげる。
「ベ、ベルゼブブ様ッ!?」
「グアアアアアアアアアァァァッッ!!」
全身を燃やし尽くしたベルゼブブだが、まだ息があるのか、彼はネネに向かって吐き散らす。
「ケホッ……。流石、獣石を扱うヤツだ。今の攻撃は効いたぜ! だがなぁ、その程度ではこの俺様に絶対に勝てねぇんだよ!」
ベルゼブブは自身の頭に銃口を向け、次々と発砲する。
「何じゃ!? 頭がおかしくなったのか?」
「ヒールバレットにバフバレット。俺の魔弾は様々な能力に応用出来るんだよ!」
言うが早いか、バンバンと撃たれた魔弾はパリンと音を立て、マジックバリアが割られる。
「し、しまった……!?」
このままでは味方を守り切れない……!
「ギャハハハ! その顔最高だし、やっぱ作戦変更っ! お前を生け捕りして姉も俺のものにしてやる! どっちかの目の前で片方を凌辱してやるが、お前はどっちが好みだぁ!」
下種がッッ……!
わらわはこんなところで終わるのか!?
ここまで仲間たちと共に戦ってきたのに全てが終わる。
何もかも諦めかけていた瞬間、どこからか大地を揺らすような轟音が響き渡る。
ドオオオオオオォォンン!!
「アア!? 何の音だ!?」
「ベ、ベルゼブブ様! 大変です! 前方からキングオーガを一撃で葬る奴が現れました!」
「族長のノノ自らやって来やがったか?」
「いいえ! どうやら種族は人間だそうです!」
「ア!? オイ何だッ!? 何が起こっている!?」
慌てふためくベルゼブブに対して、ネネはぽしょりと呟く。
「あるじ……。我が主が助けに来てくれたのか!?」
絶望的状況に一筋の光が差し込もうとしていた。
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