パワハラ勇者の経験値を全て稼いでいた《ポイント・エージェンタ》は追放されてしまう~俺が居ないとレベル1になるけど本当に大丈夫?スキルが覚醒して経験値【1億倍】なのでS級魔法もスキルも取り放題~
第12話 村を救い、キングミノタウロスを討伐したことで国王から崇められる
第12話 村を救い、キングミノタウロスを討伐したことで国王から崇められる
俺とアリシアは案内役の騎士に従い、王宮を歩いていた。
謁見の間に入ると、貴族と騎士が並んでおり、その奥には玉座に深く腰掛けている白髪白髭の国王が視界に入る。
勇者パーティに所属していた俺だが、国王と会ったのは今回が初めてだ。
――お前に国王や貴族と会う役目は絶対にない。
パーティ結成時、そんなことをレオンに言われた思い出がある。
長い絨毯を進む俺とアリシア。
しかし、俺は緊張していたため、彼女よりも歩き方にぎこちなさがあった。
「ふぉふぉふぉ。アルスにアリシアよ。悪かったな、突然呼び出して」
「こ、光栄に存じます……」
イメージでは片膝を突いて、許可された時のみ発言するというやり取りを想像していたのだが、そうではないのか?
そんなことを考えていると、温厚そうな王様は口を開ける。
「堅苦しいのは好かん。楽に話してくれてよいぞ」
「そ、そうですか……」
言われて、俺は気が楽になる。礼儀作法には疎いので、最悪牢屋行きになるかと不安だったのだ。
「うむ。本日呼び立てたのは他でもない。繫殖期から村を守った件と脅威度A級のキングミノタウロスを討伐した偉業を称えるためじゃ」
事前にアリシアから聞いた話だと、どうやらキングミノタウロスは魔物の中でもかなり強い部類に入るらしい。
後から合流した騎士団でも、恐らく全滅させられていたことから、あの村は本当に危なかったそうだ。
そんなアリシアの説明を思い出しながら、俺は国王の話に耳を傾ける。
「そこで褒賞をとらせたいのじゃが、金や領地といった褒美を何でも出させてもらおう。何か望むものはないか?」
いきなり褒賞と言われても、正直言ってピンとこない。
勇者パーティに追放されてしまった俺だが、アリシアとのこれからの冒険に期待があるからだ。特に欲しいものがあるわけでもなければ生活に不満も無い。
しかし、強いていうなら、俺は国王に一つだけ頼みたいことがあった。
「実は……孤児院への援助をお願いしたいのです」
幼い頃に両親を失った俺は過去孤児院で生活してきたのだが、最近潰れるかもしれないという噂を耳にしている。貴族が予算を年々削減しているからだ。
アリシアと冒険をする際は出来る限り送金を継続しようとしていたが、頼めるなら今お願いしたほうが良い。
お世話になった孤児院は絶対に潰されたくないからだ。
「こ、孤児院の援助か! 勿論、支援はこちらでさせてもらうが、それで十分なのか!? 他に土地や財宝もあるがどうじゃ?」
それ以外に望むものは無いので返答に詰まっていると、どこからか「うっは、ヤベェな! まじアルス様かっけぇ」という声が聞こえてくる。
それを聞いて俺は辺りを見回していると、あっと声を漏らす。
緊張したせいもあって、傍にいるアリシアのことを完全に忘れていたからだ。
「って、ごめん。アリシア! 何か勝手に出しゃばっちゃったね! アリシアは何か褒賞をお願いする?」
「アルス様のご判断ですので、私からは特にありません! それに……私の欲しいものは、もう手に入れましたから!」
ぐへへと笑いながら何故か手で口を拭う彼女。
剣聖の彼女ともなれば、金や邸宅を貰ってもおまけ程度なのかもしれないな。
「ふむぅ……。そうじゃったか……」
諦めを見せた国王だったが、何故か金貨が積まれた台車が目の前に運び込まれる。
見たことのない量に俺は驚きを隠せないでいた。何故ならその額は数億に到達しているからだ。
「えっと……。これは……」
「これは余からの気持ち……と言いたいところなのじゃが、実はキングミノタウロスを倒す力を見込んでお願いがある。聞いてもらえんかの?」
前金の契約。
そんな言葉が不意に浮かんだが、国王からの頼みなので、断ることは出来ない。
「分かりました。対応させてください」
「実はここ数日前から北にある『神獣の里』で魔王軍との小競り合いが起こっておる」
神獣の里。
行ったことはないが、元勇者パーティにいたネネの出身地がそこだと聞いたことはある。
魔王軍は大陸各地に分散しているが、そこにもいたのか。
「侵攻を食い止めることが目的ですか?」
「うむ。正直騎士団に頼りたいところじゃったが、あいにく騎士団長と大半の騎士は東にいる魔王軍と戦っているため、数か月帰ってきておらん」
どうやら自分の知らないところで、かなり大きな問題が発生しているらしい。
魔王軍ともなれば、戦いの規模はより大きいのだろう。
あの村のように、戦えない人たちが命を失うのはごめんだ。
それに、自分の力で助けられた人を救えなかったら、後で後悔する。
「分かりました。俺とアリシアで魔王を倒しましょう」
「いや、そこまで言っとらんが!?」
この場にいた全員が啞然としていたが、アルスを止める者は誰一人としていなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます