パワハラ勇者の経験値を全て稼いでいた《ポイント・エージェンタ》は追放されてしまう~俺が居ないとレベル1になるけど本当に大丈夫?スキルが覚醒して経験値【1億倍】なのでS級魔法もスキルも取り放題~
第10話 【SIDE勇者】アルスを英雄と崇める村の子供達にボコボコにされる(前編)
第10話 【SIDE勇者】アルスを英雄と崇める村の子供達にボコボコにされる(前編)
――時刻はアルスが目を覚ます直前まで遡る。
宿から出た俺はギルドの前に到着するや否や、物騒な顔で騎士がこちらに駆け寄ってくる。
「勇者レオンだなっ!」
「何だよ……。見たら分かるだろ」
「昨日の繫殖期。忘れたとは言わせないぞ! おかげで昨晩は騎士団が村に向かう羽目になった!」
「チッ……。何だよその件か……」
昨日俺はパーティメンバーに無断で報酬の良い緊急クエストを受注していた。
内容はダンジョンの繫殖期。
緊急クエストは貰える報酬が高い分、通常の依頼と違い責任が伴う。
だからこそ受ける依頼について一家言ある鬱陶しい奴がいた。聖女メイだ。
完璧主義な彼女は絶対にクリアできる緊急クエストしか受けることを許さないため、報酬重視の俺と考え方が合わないでいた。
それに肝心の繫殖期のダンジョンは昨日俺が片耳を失ったところだ。
力試しで挑んだつもりだったが、あの惨劇を味わった以上、もうメイに打ち明けることはできない。それに、話をしたところで繫殖期に向かえば確実に俺達が怪我をする。
受注した以上断れない緊急クエストに、行けば致命傷を負うダンジョン。
怪我と疲労で考えることを放棄した俺は結局バックレることにしたのだ。
目の前の騎士は不満をぶつけてきたが、俺はコイツの見逃せない発言があった箇所を問い詰める。
「オイ、オマエ。昨日は結局騎士団が駆けつけてくれたのか?」
「ああ、そうだ! 到着した時にはたまたま別の冒険者が繫殖期を終わらせてくれたから良かったものの、おかげで我々は夜遅くに駆り出された!」
騎士の報告を聞いて俺は内心ほくそ笑む。
クックックッ。誰か知らないが運が良かった。
まさかそんな冒険者がいたとはな。まぁ、どうせ大したヤツじゃないんだろうが。
「ハッ! 良いじゃないか。結局死人は出てないんだろ? なら俺は関係ない!」
「関係ないわけないだろ! 今日はその冒険者との謁見予定があるが、それが終わり次第オマエに召集命令が下りるだろう!」
「ぐっ……。何だと……」
俺は苦渋の表情を浮かべていると、今一番会いたくない女達が現れる。
「アンタ、こんなとこで何やってんの?」
「にゃあ……。『召集命令』とか聞こえたニャ……」
「ッ……! 話は終わっただろサッサと俺達の前から消えろよ!!」
メイとネネが現れた瞬間、俺はシッシと騎士を追い払おうとするが、彼は爆弾発言を解き放つ。
「偽勇者パーティのメンバーか。フン、助けを求める村人達を忘れて昨日はさぞかし楽しい夜を送ったんだろうな」
「はぁ? 何アンタ、わたし達にいちゃもんつけようってワケ? っていうか『昨日の夜』って何?」
メイが両腕を組んだ瞬間、騎士は眉をひそめる。
「おいレオン!? そこの二人は昨日繫殖期があったことを知らないのか?」
「あー、だから言うなよっっ!!」
俺はその場から逃げようとした瞬間、メイに肩を掴まれる。
「詳しく話を聞かせてもらうかしら?」
「にゃあ、やばそうなニオイしかしないニャ……」
――五分後。
全てを暴露し終えた騎士は仕事に向かい、この場には勇者パーティ三人が残っていた。
しかし、メイは無言でこめかみを押さえ、ネネはしゅんとしている。
チクショウ……!!
だから言うなっていったのに。
「アンタ。今日の依頼は?」
「まだ、一つも受けてない。っておい、メイ! お前は何を考えているんだ!?」
「何って。決まってるでしょ。今からその村に行って謝罪しに行くの」
「にゃあ。今すぐ謝りに行かないと不味いニャ」
「ハッ! 悪いけど俺は夕方【剣聖】と会う予定があるんだ。あんな名前の無い小さな村。誰が行くか!」
そう。昨日ハンター養成学校に訪問した俺は剣聖の先生と話し、今日の夕方彼女と会う段階にまでこぎつけていた。
意気揚々としている俺だったが、メイは無表情で俺の首根っこを掴み、そのまま引きずりだす。
「行くわよ。ネネちゃん」
「にゃあ。昨日行ったダンジョン近くにある村に向かうにゃ」
「チョット待てっ! 放せっ! このクソアマッ!」
レベル1のせいか、彼女の力に全く抵抗できない俺はズルズルと村まで連行された。
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