第2話 ユニークスキルが進化して最強になる
勇者パーティを追放された俺はレオンのいた街を南下し、魔物の森へと足を運んでいた。
レオンからは役立たず扱いされた俺だが、やはり冒険者を諦めたくないという気持ちはあった。
幼い頃に読んだ、英雄譚のような冒険の旅に出たいという夢があるからだ。
この森を抜ければ、新しい街に着く。そこで心機一転、新しい仲間と共に冒険をやり直そう。
まだ見ぬ世界に思いを馳せ、素材を採取しながら森を進むと、不意に正面の木々から複数の魔物が姿を現す。二メートルを越えるオークの群れだ。
こちらが一人なのを好機と捉えたのか、オーク達はすかさず俺目掛けて襲ってくる。
ギルドで「オーク討伐」の依頼は受けてないが、逃げるわけにはいかない。この森を歩いている最中に、何度か白骨化した死体を目にしているからだ。
それに、お世話になった孤児院から旅立つ際、おばさんから「冒険者になるなら人の役に立ちなさい」という言葉ももらっている。
「いくぞっ……!!」
ダンッと地面を踏み込み、俺は剣でオークの一体目を両断する。
「クオォオオッ!」
断末魔の叫びを上げるオークに、危険を察知した残りのオーク達。
彼らは俺を囲むよう即座にフォーメーションを変える。
急接近したもう一体のオークは、棍棒を振り下ろしてきたが、俺はひらりと身を躱す。
「遅いよっ!」
オークが武器を空振り隙を見せた瞬間、俺は次々と魔物の群れを無力化していく。
避けては斬るを繰り返し、一体ずつ処理していった結果、いつの間にか俺を襲う魔物はいなくなっていた。
ふぅ。と息を吐き、額の汗を拭うと、頭の中に無機質な音声が流れてくる。
《経験値が一定に達しました。レベルアップしました》
《各ステータスを更新しました》
《スキルポイントを獲得しました》
どうやら、レベルが上がったらしい。【ポイント・エージェンタ】は獲得する経験値に補正が入るので、魔物の群れは経験値がかなり美味しかったりする。
俺はすかさず、剣スキルに獲得したスキルポイント全てを割り振ってみた。
その瞬間、再度俺の頭の中に情報が流れてくる。
《スキル「ドラゴンスラッシュ」を獲得しました》
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
〇スキル《ドラゴンスラッシュ》
剣の道を極めた【剣聖】のみが使用可能。ドラゴンに対して非常に強力な一撃を放つ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ヨシ! 生まれて初めて剣スキルを習得したぞ!」
俺はその場でガッツポーズをし、笑みを浮かべる。
今まで、どれだけ剣スキルにポイントを割り振っても、有用スキルを一つも覚えなかったからだ。
魔法の才能は全くなかった俺だが、やはり剣だけは最後まで諦めきれないでいた。
「ちょっと待てよ。剣スキルを一つ覚えたってことは。ユニークスキルも進化したんじゃないのか?」
俺はすかさずユニークスキルの画面を開け、確認を行う。
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ユニークスキル:【ポイント・エージェンタ】Lv2
Lv1⇒獲得経験値上昇【大】
アンロック条件:なし
Lv2⇒獲得経験値上昇【極】
アンロック条件:剣、斧、槍、弓スキル、魔法を合計1個修得(現在1)
Lv3⇒LOCKED
アンロック条件:剣、斧、槍、弓スキル、魔法を合計3個修得(現在1)
Lv4⇒LOCKED
アンロック条件:剣、斧、槍、弓スキル、魔法を合計8個修得(現在1)
Lv5⇒LOCKED
アンロック条件:剣、斧、槍、弓スキル、魔法を全て修得(現在1)
====================================
「ユニークスキルのLv2がアンロックされているぞ! この調子でどんどんスキルを覚えていけば、より強くなれるってことか!」
期待に胸を躍らせた瞬間、突然森の奥から魔物の叫び声が聞こえてくる。
「グオオオオオオオオオッッッ!!!」
「この鳴き声は……! もしかして……」
俺はすぐさま鳴き声の発信元まで駆けつけると、そこにはドラゴンと戦闘を行っている金髪の少女がいた。
しかし彼女は片方の膝を地面についてかなり苦戦しているように感じられる。
「アリシア……ッ!?」
【剣聖】アリシア。
勇者パーティに所属していた頃、俺はギルドで依頼をこなすと同時に、彼女の家庭教師として一緒に魔物の討伐に出かけていたことがある。
【剣聖】はあらゆるユニークスキルの中でも最強に位置しているが、レベルアップに通常の100倍の経験値を必要とするのだ。
加えて、アリシアの家の方針から、一人前になるまで危険な魔物との戦闘を極力避けたいという希望があった。そこで俺は彼女の取得経験値を一時期だけサポートしていたのだ。
「くっ……。やはり、今の私ではドラゴンを倒せない……?」
俺はすぐさま彼女の助けに向かうため、大声で呼びかける。
「アリシアッ! こっちだ!!」
存在に気づいてくれたのか、彼女はすぐさまこちらに駆けつけてくる。
「アルス様!!」
俺はドラゴンの注意を惹きつけるため、入れ替わるようにして魔物の前に出る。
生まれて初めて覚えたスキルをまさかこんなところで使う羽目になるとは。
俺は剣に渾身の力を込めて、ドラゴンに向かって走り出す。
「――――ドラゴンスラッシュ――――!」
その瞬間、強烈な衝撃波が発生し、森中の木々が大きく揺れる。
「グオオオオォォッッ!!??」
肝心のドラゴンは一撃で絶命し、その場で崩れ落ちていた。
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