第49話

「作戦はどうするんだよ」

 良知の言葉に、太陽は目を丸くしていた。

「何が?」

「部長だろ。オーダー決めないと」

「あー」

 三人は電車に乗っていた。大会の会場に向かうためだ。ちなみに、交通費も部費として支給されている。

「考えてなかったのか」

「どんな並びでも勝てばいいし」

「団体戦はそういうわけにもいかないんだよー」

 扇野は目を細めて言った。

「お前経験者だもんな。まったく、纐纈は暢気すぎるんだよ」

「そんなことは……」

 実際のところ、暢気ではないとしても気合が入っている状態ではなかった。将棋をいつでも指せるようになり、大会といっても特別な日に感じられなくなっていたのである。そして、団体戦に向けてのテンションというのも上げられなかった。自分が勝っても、他の二人が負ければ駄目なのだ。あまり頑張りがいがないように、太陽は感じていた。



 雷鳥学園チームは、予選は難なく突破することができた。扇野が一敗し全員全勝というわけにはいかなかったが、それでも注目を集めるには充分だった。

 中学になったら強い相手ばかりかもしれないと思っていた太陽は、少し拍子抜けしていた。

「Bチームとかは初心者ばっかりだったりするからね」

「本命はAか」

「でも、海滝かいろうは違うみたいね」

 海滝中学は、A、Bの2チームとも決勝トーナメントの8チームに残っていた。しかも、どちらも全勝だった。

「七連覇中とか言ってたな」

 良知も少し険しい表情をしていた。

「まあでも、二人勝てばいいわけだから。何とかなるんじゃないかなあ」

「纐纈はどこまでお気楽なんだ」

「すごいねー」

 太陽は、唇を尖らせた。

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