四割・八分・九厘
清水らくは
金本先生
第1話
「あの、間に合ってますか」
少年は、泣きそうになっていた。会場の時計は、九時三十五分を示していた。
「いいよ、大丈夫」
受付の女性は、にっこりと笑った。一度はしまっていた受付表を、机の上に置く。
「よかった」
少年は名前を記した。
「じゃあ、500円ね」
「はい。……あれ? あ……ちょっと待って……」
少年は財布の中を何度も確かめていた。鞄の中も確かめる。再び、泣きそうな顔になった。
「落としたよ」
そんな彼の前に、大きな手が差し出された。手のひらの上には、500円玉が乗っていた。
「え、僕のじゃ……」
「君のだよ。間違いない」
男性は、少年の手の中に500円玉をねじ込むと、会場の中に入っていった。
「どうしよう……」
「いいんだよ、それで」
「でも」
「
「え?」
「さっきの先生の名前。今日のゲスト」
「プロの先生?」
「そう。いい将棋を見せてあげて」
女性は、少年の手から500円玉を取り上げた。
「頑張ってきてね、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます