第486話 11:25

その酒屋さんは、コンビニ、みたいになっていて

中が広くて。


「夜は居酒屋か」と、由香。


「昼間はおばーちゃんの広場」と、友里恵。



愛紗は思う。・・・そういえば、庄内駅もそういうところがあって。

いつも、近所のおばあちゃんが居て。

のどかに、ほがらかに。


お話してたりして。


・・・ああいう駅なら、駅員さんもいいかも。



・・・・とは思うけど「嫁に行け」とか言われるんだろうし(^^;



早く、おばあちゃんになっちゃいたいな(^^)。なんて思う。

見かけがカワイイから、若いから。


防御しなくちゃならない、なんて。ネェ。



わたしのせいじゃない(^^)。




・・・菜由みたいに、結婚しちゃえばいいのか。



とか、思いながら。とことこ歩くと・・・・やまなみハイウェイに登る交差点の信号に出て。



由布院郵便局がある。




友里恵「かわいい郵便局だね」



由香「うん」


屋根の上に、大きな木が梢を揺らして

涼しそう。




「タマちゃんが、ここに荷物を持ってきたとき

「ゆうメイトです」と言ったら


「こっち、来れば?」と、言われたって。」



なんて、友里恵は楽しげに。



由香は「ここまで荷物を?フロントに出せばいいのに」




友里恵は「なんかね、その頃郵便局でバイトしてたから、だって」




パティ「お友達、の気持かな・・・あ、それが小学校です」



坂を下ったところにあるのが由布院小学校。ひろいグラウンドがある。

のどかな、昭和の感じ。




その向こうに線路が見えて「駅に近いんだね」と、友里恵。



愛紗は「駅まで来ちゃった」



菜由は「帰りたくない?」




愛紗「うん・・・と言うか、旅を終わりにしたくない」



友里恵「なんか、わかるなー。あたしは、こんな長い旅ってはじめてだったし」


風、さわやか・・・・。いい季節。もうじき5月だ。


坂道に、バス停がある。



どこからか、オルゴールで「恋はみずいろ」が、流れてくる。




きょうは、すこし曇ってて、涼しい。



かたん・・・かたたん・・・と、ディーゼルカーがレールの継ぎ目を越える音がする。



そのくらい静か。


土曜日、なんだけど。



帰りたくないけど、坂道を下ると

だんだん、賑やかな駅に近づいて。


土曜日なりに、観光客が来ている駅前通りが見えてきて

バス会社の裏に、7mの路線バスが入っていくのが見えた。

それを見ても、愛紗はなんとも思わなくなったから

旅して良かったなぁ、と思う。




来る前は、なんとなく・・・やりきれない気持だった。



駅前通りは狭くて、賑やか。

そんなところは軽井沢に似ている。


黒い、由布院駅が見えてきて。


お馬さんが、馬車を引いていくのが見えた。


今の愛紗には、その風景よりも・・・・静かな、さっきの場所の方が

好ましい、と感じられる。


その一瞬は、もう戻ってこない・・・んだけど。



友里恵「帰りたくない、って言うか・・・働きたくなーい」



由香「ナマケモノだぁ」



友里恵「生毛・・・もの」



由香「なんかいやらしいなぁ、それ」


友里恵はハハハ、と笑って。駅前のロータリーの奥に居る

お馬さんのところへ駆けて行って。



見慣れた由布院駅だけど、今日でお別れ。


黄色いディーゼルカーは、2番ホームに止まっている。

その向こうに、赤いディーゼルカー。


1番ホームに「ゆふいんの森」が12時に着く、その前に黄色いディーゼルカーが

大分ゆき、出発である。



由香は「あ、あれかな?」




愛紗は「そうじゃない?」掲示してある時刻表を見て。


2 11:25  大分



とある。



「友里恵ー、乗ってるよー」と、由香は

お馬さんをなでてる友里絵に行って「先、いこ?」



菜由は「大丈夫かな」



由香「まあ、大分に行くのは知ってるから、遅れたって着くでしょ。夕方までに」




愛紗は、すこし笑顔になれた。



列車の時間ではないので、改札に人は居ない。

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