第487話 wan
改札口のない由布院駅だから、愛紗は
そのまま3番ホームに向かおうと。
1番ホームへ。
線路のところに <=大分 久留米=>
とある。
わかりやすいな、と・・・都会の駅にはあんまりないタイプ。
[ゆふ 3] とか、乗車位置番号もレールの向こうに埋めてあるのは
「台風が来るからかな」なんて思ったり。
昔ながらに、針金で吊ったトタンの板に「ゆふいんの森 4」とか
あるのは懐かしいけれど。
これは、新宿駅のようなところでも中央線ホームには、最近まであったり。
ホームの南由布よりまであるくと、構内踏み切りになるので
「階段よりラクか」と、菜由はそっちへ。
愛紗は、まあ、階段の方が近いから
左に曲がって。駅舎沿いに歩く。
ホームの端っこに足湯があって・・・・愛紗は指宿の駅前を思い出す。
「友里恵ちゃんが・・・トイプーちゃんと仲良くなって」
月曜だったかな?
えーと・・・土曜におばさんチに泊まったから。
日曜かな。
あ、違うか。指宿に泊まって、次の日か、その次の日か。
「なんだか、わからなくなってきた(^^)」
階段を昇っていると、その足湯の温泉の匂いが、ああ由布院のお湯。
と、気がついた。
「湯の花、買ってくればよかったな」と、つぶやく。
パティは「アレは、売ってますね、通販で」
詳しいのね、と言うと「ハイ、列車で時々「売ってない?」って」
聞かれるそうだ。「カルイから、乗せてもいいかなと思いマース」と、パティはにこにこ。
階段をとことこ登る。
由香は・・・・?と、思って振り返ると
やっぱり友里恵が心配なのか、戻ったみたい(^^)。
「いいお姉さん役ね」と、愛紗は思う。
そう思うと・・・ふと、大岡山を辞める事に
ちょっと淋しいかな、なんて・・・思ったりもする。
跨線橋を渡って、2番・3番ホームに下りたら
友里恵と由香が駆けてきて。
3番ホームの向こうの大きなイヌ小屋から「わんわん!」
友里恵を見つけて。
友里恵は「あ、リトルちゃん。また来るねー」と、手を振って。
大きなラブラちゃんは小屋の上に乗っかって、鉄の柵の上に顔出して
しっぽを振っている。
ベロだして。「わんわん!」
由香は「あれだと、出ようと思えば出れるな」と(^^)。
友里恵は、その声を聞いてて淋しくなったのか「帰りたくないな」
と、立ち止まる。「お別れしてこないと」
由香は「今から行ってたら、出ちゃうぞ列車」
友里恵は振り返り「庄内で待ってて、あたし、次ので行く!」と
とととと・・・・と、階段を昇っていった。
由香は「・・・・心配だから、あたしもついてくよ」と。
やれやれ・・・と言う顔で。
パティも「はい。では、道案内に・・・・」と(^^)。
愛紗は「どうする?」と、菜由に聞いて。
菜由は「まあ、庄内に用があるのは愛紗だし」
そっか、と・・・愛紗は納得して(^^)。
菜由と愛紗は、黄色いディーゼルカーに乗る事にした。
11時23分。
乗ってた方がいいかな、と・・・・愛紗と菜由は
列車のドアに足を掛けて。
空気バネだから、ゆらり、と揺れて「太ったかなぁ」と、菜由(^^)。
愛紗は「あたしも・・・楽したし」なんて(^^)。
土曜、とは言えお昼前なので
空いている。
大分に遊びに行く学生さんとか、お買い物のおばさん。
そんな感じ。
用事のある人はそんなに・・・・いない様子。
♪ぴんぽーん♪
録音の、婦人の声が聞こえる
ーーこの列車は、大分ゆきですーーーー。
カンタンなアナウンス。
優しげな、お姉さん声に愛紗は
なんとなく和む。
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