第485話 yufuin no

こんど、いつ・・・?


来れるだろう。


そんな風に思うと、淋しくなる。ひとつひとつの出来事を

大切に覚えていたいと思うから


同じところに住んでいるって、勿体無いことなのかな、なんて

愛紗は思ったりもする。


同じ時間なのに。



でも・・・バスの仕事って、毎日が旅だから。

ガイドはそうだし、ドライバーもそう。


鉄道もそうなんだろな、って思って


パティに「ねえ、パティ?」



パティは「なんですか?」と、大きな青い瞳でにっこり。


愛紗は「パティは、毎日CAしてて、いろんな事があって。

思い出一杯で、いいね。」



パティはすこーし考えて「はい。いろいろありますね。そういえば。

同じ列車に繰り返し乗務は無いですし。だいたい違います。」




理沙は「そこはCAの方がいいなー。機関車はね、だいたい同じ。

同じじゃないと危ないんだけど。」



愛紗は「違うところだと、解らない」



理沙「そうそう。機関車は特に。重いし」




菜由は「列車、何時だっけ?」



愛紗は「11時25分、次が12時35分」



理沙「じゃ、ぼちぼち・・・」




名残惜しいけど。と、愛紗は振り返りながらラウンジの景色を心に留めた。

また、来よう。



そんな気持にさせる宿だった。




大きなガラスの扉は綺麗に磨かれていて。

す、と静かに開く。




友里恵も、振り返りながらケータイで写真撮ったり。

「なんか、淋しいなぁ」



入り口の脇にある、温泉が流れてる水道に触れて。あったかい、なんていいながら。


つつじの植え込みが綺麗に整っていて。

白いモザイク・タイルのエントランス。




愛紗は思う。



こんなふうに・・・・・4人で来る事ってもう・・・たぶん、ない。

そう思うとステキな一瞬ね。



見上げると、九重連山が見える。



・・・・あの、向こうまで行ったんだ・・・・。と。



列車の旅は、いいなあ。と。




「どっからいこうか?」と友里恵。



菜由は「車が来ない道」



パティは「そこの、お店の脇から斜めに入ると、花の木通りに出ます。まっすぐ行くと

郵便局の通り」




友里恵「じゃ、とりあえず道渡って、向こうへ」


と、由布見通りを渡ると、由布岳が大きく見えた。




近くで見ると大きいな、と、友里恵は思う。

通りの向かいは、民芸のお店があって

瀬戸物が沢山。



由香は「割るなよ」(^^)


友里恵「わかってるって」(^^)



細かな模様のある民芸のお猪口とか・・・一杯あって。

ドミノみたいに触ったら、全部倒れそうだ。



そのお店の脇を通って、斜めに入る道を通ると

コンビニ、みたいな小さなお店。


柴犬が、踏ん張って立っている。



友里恵は「あ、かわいー」と、しゃがんで。よしよし。


わんこは、友里恵をなめている。ぺろぺろ。



「きゃ、やめてー」と、友里恵。


わんこは、短いしっぽを、ふりふり。



由香「やめてー」って言って喜んで」(^^)。



菜由「イヌ科、ネコ目」


パティ「それは新しいかも」


愛紗「ふふふ」



とかいいながら、遊びながら・・・そこは、花の木通りのおしまいのところ。

左に曲がると花の木通り。



閑散とした、ふつうの・・・田舎の裏通り。



菜由は「いいね、この感じ」



愛紗「山北駅の前みたい」


そういえば、そんな感じもする。昭和40年、みたいな感じ。



まっすぐ歩いていくと、すこし大きな酒屋さんが右手にあって。

高い木。梢は緑で、爽やか。



風が吹くと、さらさら・・・・と。木の葉がささやく。



愛紗は「ずーっと、住みたいね。こういうところ」



菜由は「うん。わたしの田舎と同じ」



由香は「おーい、友里恵、置いてくよー」



友里恵は、さっきのわんこと遊んでて「じゃねー」と、手を振って。


駆け出してきた。


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