第442話 いってこよー

菜由にも、愛紗の気持は少し解るような気がする。

自身、鹿児島から出てきたのは・・・そういう、どこにいても

「あそこの娘さん」と言う視点で見られるのが、ちょっと面倒、に

思えた部分もあった。


そのまま、夫もそういう・・・「どこの、だれ」が特定されてしまうと

安全なのかもしれないけど・・・・窮屈な感じもした。



でも、都会に出てきてもやっぱり、会社の上司や、彼氏とか。

そういうものに守護されないと、ならない。



なら、田舎に居ても同じだったのかな?なんて今は思う。


それで・・・・子育てをキッカケに、田舎、と言うか

九州に戻ろうかな、とは思っていた。




だからと言って、愛紗みたいに・・・オトコの仕事をしたいとか

バスや機関車を運転してみたいとか、そういう事までは思わなかった。



そんな能力も、ありそうにないし。




なろう、として、なれてしまう愛紗や、理沙は

違う人種なのだろうと・・・菜由は思いながら


とことこ・・と。庄内駅の1番線ホーム、コンクリートのままの

長いホームを歩いて、駅舎のほうへと歩いていった。


新しく立て直された庄内駅は、綺麗で、観光客も楽しめそうな

外観になった。

木質の外装、神楽に使われる面があしらわれた駅名表示。

待合室に、委託駅らしく・・・様々な地場の物品が置かれて

販売委託されているあたりは同じであるが


ちょっと前までは大正時代の建築だという表示もある、古い駅で

宿直もできるような、そういう・・・・鉄道の映画に出てきそうな駅だった。



そこの1番線ホーム、改札の脇にカナリアの籠を吊るして

住んでいたのが、愛紗の伯母さんである。


ずっと、そうして・・・生きてきたのが彼女の思うところなのか?は

菜由には解らない。



女性の社会進出がまだ、無かった時代の話だし・・・・

菜由にも少しは「子供産むなら若い方が」と言う意識もあった。



今は、まあ・・・・子供、と言う意識が薄れている時代でもある。

横浜あたりにいるような若者になるんだったら、産みたくないなぁ、なんて

思う菜由でもあった。


だから九州に戻ろうなんて思ったりもした。




けどね。





なんて、灯りが眩しく感じる庄内駅の改札へ。











275列車は、下り坂をゆっくり。制限は45である。

単線であるし、崖に張り付くような線路なので

不慮の事故や、落石などの心配も、少しはある。




踏み切りがいくつかあるので、注意する必要がある。


ディーゼル・カーが踏み切り事故を起こしたのも、確かこのあたりだったと

理沙は記憶している。




ふと、思う。



救援85列車の牽引は、単機で十分なのではないか?

1350psあれば。


とは思ったが・・・そこは指令の考えである。



考えを止め、前方を注視した。



すこし暗くなった鉄路。

ヘッドライトは、薄暮ではあまり・・・視界の確保には有効とはいえないので

真っ暗になってくれた方が、本当はいいのだけれども。




V12エンジンは、静かに回っている。









友里恵は、407号室の自分のベッドに、とりあえずダーイブ!

寝転んで「あー、遊んだなあ」



由香は、窓際のスツールに座って「じゃ、お風呂でも行こうか。愛紗が帰ってくるのは

もう少し後だし」



友里恵は、仰向けのまま「うん。」と頷いて


「それだとさーぁ、愛紗が帰ってきて・・・お風呂入って。ご飯だと

理沙さんも帰ってくる時間じゃん」




由香は「そうだけど・・・パティどうする?」


パティは、TVのそばのソファに座って「わたしは・・・どっちでもいいです。

今夜は家に帰ろうかと思ってて、部屋もとってないですし」



友里恵は起き上がって「いいなー家がこんなリゾートにあって。

あ、ネコいるんでしょ?見せて見せて?」




パティは「いいですよー」と、にこにこ。




友里恵は、ぴょん、と起き上がって「よし!じゃ、行ってこよ!」

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