第443話 青春のリグレット

「由香は?」

友里恵は、ふかふかの絨毯の上、スリッパなので

すこしよろけながら。


「そだね、あたしも行く」と、由香は

スツールから立って。

窓に掛かっているカーテンの隙間から、外を見た。

白滝川の畔、人影は少なくて。


さらさら、と・・川の流れが聞こえるくらい静かだ。



秋になると、花を咲かせるコスモスが

今は草だけで、夜風に吹かれている。



「パティのお家って、近い?」と、友里恵。



パティは、ふんわりブロンド、ふわふわ。

にっこり。大きな青い瞳



「すぐそこです。ケーキのお店のそばの」



「じゃ、いいね。愛紗たちが帰ってくる前に戻れる」と、由香。



友里恵「メールしとこう」



由香「そうだね」




友里恵「それとさ、ダンボール貰ってきて、スーパーで」



由香「なにすんの?」



友里恵「荷物送るの。明日帰るから。」




由香「あ、そっか。頭いいー。」



友里恵「エヘヘ」



友里恵は、ちょこっと愛紗にメールした。









庄内駅の事務室で、愛紗はお茶を出そうと・・・・

ポットの中を見て。


改札口の方のお部屋には、切符の販売機があったりして

なんとなく駅、らしいけれども

引き戸の向こうのお部屋は、キッチンと、ダイニングがある

ワンルームみたいな作りになっている。



昔、木造だった頃とレイアウトは同じだから

リフォーム、なのかもしれない。



見た目はほとんど新築である。




愛紗のバッグの中で、メールの着信ランプが光った。


サイレントにしていたので、音は出なかったけど

愛紗はそれに気づき、ケータイを見た。



「あ、友里恵ちゃん、お出かけね」と。にっこり。




伯母さんと菜由が、改札の方に戻って



愛紗は「友里恵ちゃんね、パティのお家に。にゃんこ見に行くって」



菜由はにっこり「ネコ好きだもんね」



伯母さんは「友里恵ちゃん、一緒じゃないの」



愛紗は「うん、日田でね、ちょっと別行動」


ビール飲んで酔っ払ったとは言えない(笑)。

菜由が。



パティも飲んでたけど・・・・やっぱり、アメリカンだから、丈夫だ。




(^^)。



伯母さんは「日田行ったの。賑やかだったでしょ」



愛紗は「行きにね、トロッコ列車に乗って。」


そこで、菜由がビール飲んでダウンした、のは言えない(笑)。




伯母さんは「そこで、機関士さんと知り合ったの?」




愛紗は「知り合ったのは由布院なの。KKRに泊まってて。友里恵ちゃんが

バーで知り合って。」




伯母さん「バー?」


菜由は「バーって言っても、今は誰も使っていなくて。」



伯母さんは、ちょっとわからないかんじで。(^^)。



愛紗「あ、でもね。そのトロッコ列車を牽引する仕事に当たって。

機関車に乗せて貰っちゃった。」と、にこにこ。




ポットのお湯が、割と熱いので

急須にお茶入れて。



伯母さんの湯のみと、あとふたつ。



お盆に乗せて。




出札の机に、伯母さん用。


自分たちのは、リビングの方に。




伯母さんは「友里恵ちゃん、いい子ね。」と。


めがねの奥で、にこにこ。



愛紗は「うん。ほんと。みんな、友里恵ちゃんのおかげ。」


菜由も、そう思う。

別に、愛紗に付き合う事はないのに

九州まで一緒に来てくれて、元気づけてくれて。



伯母さんは「それで、機関車乗りになりたいって思ったの?」

と、言おうと思ったけど


折角、自然な気持を思いだしている愛紗に


また、干渉するようなことを言うと・・・・

元に戻ってしまうかな、と思って。


やめた。



いままで、ずーっと。回りから・・・・。

女の子ってそういうところがあるけど、見られてきて。


いたから。



愛紗自身が、したいようにして。

それで失敗したって、後悔はできない。




でも、そうでないなら

後悔が残るかもしれない。


そんなものだと、伯母さんも思う。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る