第395話 サッポロビール日田工場

友里恵たちが乗った「ひためぐりバス」は

結構急な坂道を軽快に昇って

サッポロビール日田工場に着く。


公園のように綺麗な芝生と、エントランス。

大きなロータリーを、バスはぐるりと回って

出発位置の停留所へ。


運転手さんは、サイドブレーキを引いて。

マイクロバスと同じで、左手にある。


「着いたけん」と、にこにこ。


友里恵は「折り返し40分ですね」



運転手さんは「そう」



由香「十分飲めるね」


運転手さんはハンドルのマネをして「残念」と、にこにこ。「タダで呑めるよ」と。



パティは「ホント?」



友里恵は「パティ、いくつだっけ」



パティ「ニホンゴ、ワカリマセーン」



由香「便利だなぁそれ」



パティは笑った。



友里恵「ニホンゴ、ワカリマセーン」



由香「ただのバカだよ、それは」



友里恵「ハハハ」




芝生が真ん中にあって、木が生えていて。

生やした木、と言うより・・・元々そこに木があって

周りに緑地を作ったような、そういう感じ。


地形をなるべく生かしたような工場のようで

ロータリーも、設計図を引いたような形ではなくて

丘のカタチに沿っている。


緑地は、芝生もあるけれど

自然の緑、クローバーが生えていたり。


白い、ちょうちょが舞っていたりする。



「あ、かわいい」と、パティはちょうちょの・・・ひらひら・・・を

遠くで見ている。




友里恵は両手を広げて「ちょーちょー♪ちょーちょー♪」



由香「カトちゃんかいな」



パティ「ハハハ」



ガラス張りのおおきなエントランスには、結構人が一杯居て。



遠くにあるバス・パーキングには観光バスが何台も停まっているのが見える。



友里恵は「あー、なるほどぉ」


由香「なんか思い出したなあ、明後日からのこと」



友里恵「明後日だっけ」


由香「・・・・今日が金曜だから、月曜だけど、日曜からもう準備じゃん」



友里恵「・・・なんか、イヤんなってきた」



由香「ハハハ。確かに。じゃ、辞めれば」



友里恵「それもいーねぇ。何して食うの?」



由香「ネットアイドルとか」


友里恵「ムリムリ」



由香「確かにねー、JKならともかく」



友里恵「17歳の時、タマちゃんに薦められた」



由香「ネットアイドル?」


友里恵「ハダカはイヤだって言ったけど」



由香「ハハハ」



友里恵「でも、服着てるふつーのでいいって。

あたしはさー、ミニコミ雑誌に写真撮られたりしたし」



由香「うん、それは知ってるけど」




パティ「記念館見てみる?」


由香「そっか。40分じゃ駆け足だ」




パティ「見て回るだけならすぐ」



友里恵「そーなんだ、行こう」


と、3人は屋根のついたエントランスから記念館へ・・・・。




友里恵は「でも、今思うとハダカくらいだったら見られても良かったような」


由香「そうなった今は、もう誰も見てくれない」


友里恵「ちげーねぇ。」


パティ「ハハハ」



友里恵「やっぱ旬ってあるからなぁ」







機関士・理沙は

回9002列車、DE10 1205のブレーキ・ハンドルに手をそえながら・・・。



「天ヶ瀬、通過。ホーム、注意!」


左運転台からホームは反対側なので

遠くから目視確認。ホームには人が数人居るが

対向列車の特急「ゆふDX」の車掌も見ているし

駅員も居る。



「速度、20!」



ゆっくりゆっくり・・・・の。トロッコ編成。

ホーム上の人が万一、引っかかったら

20km/hでも危ない。



編成ブレーキ弁に手を添えたまま、やや右カーブの天ヶ瀬駅ホームを慎重に通過する。








客車では、乗務員室窓から車掌・洋子が

少しだけ顔を出して。


右手で「ホーム、注意!」指差し確認。



左手は非常ブレーキひもを持っている。




トロッコ編成に興味を持った子供が、寄って来る事も

有り得るが


ホームに居た乗客に、子供の姿はない。




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